なぜタクシーに?外国人運転手の興味深い素顔 資格取得だけでなく求められる能力も高い

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日の丸交通の外国人社員の中で、最古参に当たるのがルガー・ウォルフガングさん(53)だ。オーストリアのテルニッツ出身であるルガーさんが、ドライバーになったのは2018年冬。以降、多くの外国人ドライバーが慕う兄貴分的な存在でもある。

オーストリア出身のルガー・ウォルフガングさん。2018年からドライバーを始めた(筆者撮影)

初来日は22歳のとき。勤めていたオーストリアの製鉄企業の研修で、兵庫県に半年ほど滞在した。結果的にこの半年間が、ルガーさんの人生を大きく変えることになる。

「ご飯、自然、人々、街の雰囲気――。すべてが好きになって、絶対に日本に住みたい、と」

帰国後ほどなくして退職し、新潟県の越後湯沢に移住している。越後湯沢では20年にもわたってイタリアン料理店で雇われ店長を務め、冬はスキーのインストラクター、夏は山登りのガイドなどで生計をたてた。

26歳で日本人女性と結婚し、2児の父でもあるルガーさんに転機が訪れたのは3年前。妻の家庭の事情で、一家で埼玉県への転居が決まったことだ。ゼロから職探しをする中で、インターネット上の日の丸交通の募集広告が目に留まった。

接客業へのこだわりを持っていたルガーさんは、4カ月に及ぶ猛勉強を経て、2018年11月にドライバーとしてのキャリアをスタートさせた。

毎日どこに行くかわからないことが楽しい

日本語、英語、ドイツ語を操るトリリンガルのルガーさんがなぜタクシーを選択したのか。本人に訊ねると、毎日どこに行くかわからない変化が楽しめるから、という。

「3年目を迎えた今でも、面白がってこの仕事ができているんです。ドアが開くと『今からどこに行くの』というドキドキ感があって、毎日違うお客様と会話をする。例えば港区と上野では乗る人の層も違うし、そういう発見も新鮮で。

仕事じゃないとここまで東京の街を知れなかった。特に葛飾などの下町が好きですね。私は日本では外国人ということもあり、車中でいろいろ話しかけてもらえる。もの珍しく見られるのも好きなんです(笑)」

次ページ働き始めた当時、外国人は20人以下だった
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