なぜタクシーに?外国人運転手の興味深い素顔 資格取得だけでなく求められる能力も高い

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ルガーさんが働き始めた2018年時点では、日の丸交通で働く外国人は20人を下回っていた。そして、タクシー業界が好景気と呼ばれていた時期にもあたる。当時と比較すると、働き方の視点や優先順位が変わってきたのもルガーさんの現状だ。

「2019年までは街を走らせると乗客を拾えたし、売り上げも5万以上稼げた。今は誰もが厳しい状況ですよね。よく『外国人が働くうえで大変なことは?』と聞かれますが、ある程度の日本語が話せれば特別難しいことはない。私自身も嫌な思いをしたことはほとんどありません。

ただ、より高い水準のサービスを求めるなら難しいこともある。例えばビルを指定されても、どの降り場所がいいのか、反対側の道路でもいいか、など細かい確認がたくさんある。かといって細かすぎるのはよくないし、その辺の加減が難しい。お客さんが減っている今だからこそ、選んでもらえるよう細部にまで気が回るようになりました」

後輩たちのサポートもしていきたい

キャリアを重ねた後は観光タクシーに、という未来図をルガーさんは描く。おのずとその視線は、後輩ドライバーたちにも向かう。

「外国人の中で最も長いといっても、まだまだ業界では新人みたいなもんです。もっと仕事に慣れて、会社に貢献していきたい。後輩もどんどん増えているので、働きやすいようにサポートもできたらな、と思っています。自分のぺースを保ち、走り方も働き方も無理をしないこと。それがこの仕事のポイントと最近感じるようになり、みんなにも伝えています」

先進国や自国の労働力が少ない国では、外国人がタクシードライバーを担うケースも多い。実際に多くのタクシー会社代表が「今後必要となる人材」と話すように、都市部を中心にタクシー業界へ外国人労働者が流入する時代が訪れるだろう。そのときに、先駆者たちの存在は後進への導きとなっていくはずだ。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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