作家たちが猛反発「巨大化する出版社」の大問題 アメリカの大手出版社統合にあがる懸念の声
今回の買収は全額現金で行われる。そのためサイモン&シュスターを売りに出すバイアコムCBSには、債務を減らしたり、株主配当金の支払いを継続したりする原資が手に入る。映画会社のパラマウントや子ども向けチャネルのニコロデオンを傘下に持つバイアコムCBSは、ストリーミングに社運を賭け、事業の絞り込みを進めたともいえる。出版はこうした戦略で重要な役割を担うことはない、という経営判断だ。
サイモン&シュスターの編集方針は今後も変わらない、とベルテルスマンの取締役会メンバーでもあるペンギン・ランダムハウスのマーカス・ドール最高経営責任者(CEO)は話す。ペンギン・ランダムハウスでは傘下の出版社が出版権の獲得をめぐって競い合う方針がとられており、これはサイモン&シュスターにも適用される。
「過去に行った統合でも、この方針は維持された」と、ドール氏はランダムハウスとペンギンの合併を引き合いに出す。「基本的に編集サイドには影響は出ない」。
作家や書き手からは懸念の声
ドール氏によれば、ペンギン・ランダムハウスのサイモン&シュスター買収によって寡占が生まれるとの懸念は、データではなく、「政治的な意見」に基づいているという。
ドール氏は「出版業界はほかの産業に比べ、はるかに分散し、細分化されている」とし、「(独禁法当局の審査を)クリアできると確信している。作家、著作権エージェント、書店に対するサービスレベルの向上につなげられるという確信もある」と語った。
ベルテルスマンの広報担当者は、ペンギン・ランダムハウスはここ数年で市場占有率を落としていると言い、その理由としてアマゾンが出版業界全体の競争相手として勢力を拡大している現状を挙げた。
それでも、出版社が一段と巨大化し、市場占有率を高めることに対しては、一部の作家や書き手の団体から警戒する声があがっている。