長引く「親の離婚争い」に死を考えた少女の絶望 親視点の「子どものため」に引き裂かれる悲劇

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親の長引く離婚騒動に引き裂かれる子どもの本音とは(写真:筆者撮影)

親の不仲や離婚でつらい思いをした人の話は、これまでにもたくさん聞いてきました。大人たちのせいで申し訳ない、といつも思うのですが、今回はことさらにやりきれない話でした。

連絡をくれた千尋さん(仮名)は高校生。両親はここ10年ほど別居していますが、離婚はまだです。2人とも子どもたちの親権を求め、いまも弁護士を挟んで調停を続けているのです。大好きな妹とは、もう3年近く会えていません。千尋さんは数年前に双極性障害の診断を受け、いまも希死念慮を抱きつつ日々を過ごしているといいます。

11月の休日、買い物客でにぎわうショッピングモールを抜け、約束のカフェへ。千尋さんはボーイッシュな装いの、優しい笑顔の高校生でした。毎度のこと、人の内側にある苦しみは外から見てもわからないことをかみしめつつ、彼女の話を聞かせてもらったのでした。

けんかのたび「父に似ている」と言ってくる母親

千尋さんの記憶にある限り、両親はいつも「けんかをしているか、全然口をきいていないか」のどちらかでした。

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「根本的に性格が合わないな、という。父親も母親も自分がこうだと思ったことは曲げないし、母親はカーッとなると怒りが爆発しちゃうタイプで、話し合いにならないんですよね。だからもう、モノは飛び交うし、手は出るし足は出るし、みたいになっちゃう」

父親が完全に家に帰らなくなったのは、小学2年生の頃でした。仕事が忙しくなり、家では妻とうまくいかず、限界だったのでしょうか。父親が家を出たことに、千尋さんはどこか納得しつつ、また妹が両親のけんかを見ないで済むようになったことに、ほっとしていたといいます。

しかし母親は、父親が出ていったことで精神的に不安定になり、その不安や怒りを、長女である千尋さんにぶつけるようになっていきました。

「けんかをするたびに『父親に似ている』とずっと言われて、父の悪口とともに怒られる、みたいなことが結構あって。当時もふつうに傷ついていましたけど、いま考えたら、相当きついものがあるな、と思います(笑)」

親が子どもに他方の親、つまり別れた配偶者の悪口をいうことで、子どもがどれほど傷ついているか。当連載で繰り返して伝えてきたことですが、まだ世間にはよく浸透していないのでしょうか。両親が別れても子どもからしたら親は親であり、その親の悪口を言われることは子どもにとって、自分を否定されたのと同様に感じられるものですが、しかもその親に似ていると、千尋さんはたびたび言われたわけです。つらかったことでしょう。

「母とはずっとけんかが絶えなくて、それもすごく嫌でした。せっかく3人で仲良く暮らしていこうってなったのに、母親と自分がけんかしていたら意味がない。妹からしたら、結局同じもの(家族のけんか)を見ることになってしまうので」

両親のけんかを見るのをつらく感じていた千尋さんは、妹に自分と母親のけんかを見せてしまうことに、強い罪悪感を抱いていました。本来なら親が負うべき葛藤を、子どもである彼女が背負いこんでいたのです。

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