長引く「親の離婚争い」に死を考えた少女の絶望

親視点の「子どものため」に引き裂かれる悲劇

母親は当時、父親がいつか戻ってくると思っていたようでした。いつしか父親には恋人ができたのですが、母親のなかでは「夫は以前から浮気をしていて、そのせいで出ていった」というストーリーに置き換わり、よく父親に電話をかけては「子どももいるんだから戻ってきなさい」と言っていたということです。

父のもとでの暮らしと、妹に会えなくなった理由

千尋さんは当初、父親のもとで暮らすことは考えていませんでした。父親がどんな生活をしているのか、まったく想像がつかなかったからです。しかし、小6のときに父親に買ってもらった携帯で連絡をとり合うようになってから、徐々に状況が変わっていきました。

「父親と会ったとき、『母とけんかしちゃう』みたいな話が、ぽろっと出ちゃったんです。父親は心配したのか、(親権をとれる)チャンスと思ったのかわからないけど、『そんなに大変なの?』みたいな話をするようになって。

中1の冬頃、母とめちゃめちゃでかいけんかをして、そのとき初めて父親の家に行ったんです。そうしたらちょうど彼女さんがいて、初めて挨拶することになったんですね。感じ悪い人ではなくて、自分はけんかのショックで泣いたりしてたのを慰めてくれて。その日はそれで帰ったんですけれど」

問題は、数カ月後に起きました。千尋さんは「彼女さん」と会ったことを母親に黙っていたのですが、それがたまたまバレてしまったのです。予想どおり母親は怒りを爆発させ、千尋さんを「父親側」とみなし、ますます厳しくあたるようになりました。千尋さんは何も悪くないのですが、こうなるともう、どうしようもありません。

千尋さんが父親のもとで暮らし始めたのは、中2の春でした。この頃にまた母親と激しく衝突し、「どちらかがケガをするまでけんかが終わらない」ような状況に陥ったのです。当時相談していた学校の先生から、「もしまたけんかをして危ない状況になったら、父親のほうに逃げなさい」と言われていたこともあり、父親に連絡して迎えにきてもらい、そのまま父の家に「帰る」ことになったのでした。

父の家での生活は、千尋さんにとって「すごく穏やか」なものでした。幸い転校もせずに済み、また父親のパートナーの女性も家族のことで悩んだ経験があったため、千尋さんの話をよく受け止めてくれたのです。父親と暮らすのは約10年ぶりでしたが、このときやっと「父親ってこんな人なんだ、と認識した」といいます。

大きなけんかを繰り返したものの、その後も千尋さんは母親と連絡をとっており、誕生日やお正月など、ちょくちょく母と妹のもとを訪れていました。ところが高1の春、そんな関係も途切れてしまうことになります。

ある日、母と妹の家から千尋さんが帰ろうとしたとき、母が離婚調停の資料をもち出してきたのです。そこには、千尋さんが父の家に身を寄せるきっかけとなった母とのけんかや、そのとき彼女が負ったケガのことなどが書かれていたのですが、母親はそれを取り消すように求めてきたのでした。

「母親は『こんなことなかったでしょ? うそでしょ?』みたいなことを言っていました。わからないんです、母が本当に忘れているのか、なかったことにしたいのか。そのときは妹もいたし、楽しい気持ちのままで帰りたかったから、『そんな話をしにきたわけじゃないから』ってずっとなだめていたんですけれど、母はその話しかしないし、帰らせてもくれない。

それで最終的に私が警察に『家庭内暴力です』みたいな電話をしました。来てくれた警察の人に事情を説明したら、親身に聞いてくださって。それで父に迎えに来てもらって帰る、みたいな感じでした」

次ページ数カ月後、千尋さんの苦しみは…
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