中国がインドに「大規模停電」仕掛けた事情 インドの電力を人質に取る中国のサイバー攻撃
昨年夏、中国とインドの軍隊が人里離れたガルワン渓谷の国境地帯で突如衝突し、石やこん棒を使った戦闘で互いに死者を出した。
その4カ月後、約2400キロメートル以上離れたインドの2000万人都市ムンバイで大規模停電が発生。鉄道は停止し、株式市場も閉鎖。新型コロナウイルスのパンデミックが最悪の状況を迎えていたさなかに、病院までもが人工呼吸器を動かし続けるため非常用発電に切り替えなければならなくなった。
中国に盾突けば全土停電
これら2つの出来事には関連性があるとみられていたが、新たな調査によって、その正しさが一段と裏付けられた。ムンバイの大停電は中国のサイバー攻撃だった、という見方だ。国境問題で領有権を声高に主張するとどうなるか。それをインドに思い知らせるために、中国がタイミングを見計らって、あるメッセージを送りつけたというのだ。中国はその気になれば、インド全体を大停電に陥れることもできる、というメッセージだ。
調査によると、ヒマラヤ山脈の中印国境衝突で少なくとも20人を超す死者が出る中、中国のマルウェアがインド全体の電力供給、超高圧変電所、石炭火力発電所を管理する制御システムに流れ込んでいた。
流れを突き止めたのは、国家勢力によるインターネット上での活動を調査しているマサチューセッツ州の企業「レコーデッドフューチャー」だ。同社の調べでは、これらマルウェアの多くは単に埋め込まれただけで作動には至らなかった。
同社はインドの電力システムの内部に入ることができなかったため、インド全域をカバーする重要配電システムに埋め込まれたマルウェアのコードを詳細に調べることはできなかったという。同社はマルウェアの存在をインド当局に通報したが、これまでのところインド当局から報告はない。