日本の観光地はなぜ「これほどお粗末」なのか 情報発信の前には「整備」が絶対に必要だ

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せっかく来てくれた外国人観光客も、満足しなければお金を使ってくれません(画像:twinsterphoto/PIXTA)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきたアトキンソン氏は、近著『日本人の勝算――人口減少×高齢化×資本主義』で日本の生存戦略を明らかにしている。
アトキンソン氏の提言どおり、人口減少時代に対応して「変化しつつある」のが観光業だ。本稿では、日本の多くの産業の参考になりうる考え方が詰まった「観光業の変革」について述べてもらう。

観光業の「負のスパイラル」はあらゆる産業に見られる

前回の記事(日本の観光業は「生産性向上」最高の教科書だ)では、日本政府が2020年の達成目標として掲げている「4000万人の訪日外国人客数、8兆円の観光収入」のうち、国が大きな役割を担う人数目標は達成可能な一方、民間の役割が大きい収入目標は達成が難しいという説明をしました。

『日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』は7万部のベストセラーとなっている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

政府は、2020年の8兆円に続いて、2030年には15兆円を観光収入の目標として掲げていますが、今のままではこの目標の達成も厳しいことが予想されます。

では、どうすれば2030年の15兆円の目標を達成する可能性が高くなるか。今回はこの点について考えていきたいと思います。

2020年の8兆円の観光収入目標の達成が難しいのは、いろいろな問題が原因として入り組んでいるからです。

日本の観光業は、伝統的に生産性の低い業界でした。なぜ観光業の生産性が低かったのか、その原因にはさまざまな歴史的な背景があるのですが、中でも、人口激増がもたらした歪みが大きいように思います。

少し単純化しすぎかもしれませんが、人口が増加していた時代の日本の旅行の主流は、社員旅行や修学旅行など、いわゆる団体旅行でした。つまり、都市部から大量の人間を地方に送り届けるという行為が、日本の観光業界の主要な仕事だったのです。マス戦略です。

マス戦略なので、旅行先の地方でお客さん一人ひとりが落とす金額は少なかったのですが、やってくる人間の数が多いので、ある程度まとまったお金が地方にも落ちるようなシステムができていました。

当時の交通機関や旅行会社は、送り届ける人間の数を盾に、地方の受け入れ先の料金を下げさせました。その結果として、主に旅行会社や交通機関が儲かる仕組みが出来上がっていたのです。これはこれで、人口増加時代ならではの、賢い儲け方だったと言えると思います。

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