■依然として、取り替え可能な存在なのだ
ここで留意しておかなければならないのは、社内の出世競争に走っているうちは、まだほかの人と「取り替え可能」な存在であるということだ。
会社内の仕事が何よりも優先すると考えている人の中には、険しい顔つきの人は少なくない。彼らは、会社内のシステムに過剰に反応し、それを内面に取り入れて適応している。
しかしそのシステムの本質は、上司・部下との人間関係や、合理性・効率性の部分が大きいので、本来の自分は何をやりたいのか、どう生きたいのかという、新たな自分を見つける解答は、そこからは与えられない。働かないオジサンになるリスクはまだ十分に残っているのである。
仕事好き好き型:あきらめてはいけないが「運次第」
■「いい顔」で過ごす会社員
「働かないオジサンにならない働き方」の2つ目、仕事好き好き型(Bエリア)の事例を、いくつか紹介しよう。
保険会社の調査研究部門に在籍していたFさんは、学究的な性格で、営業や社内の調整ごとなどは、得意ではなかった。このためトップで出世したわけではなかったが、50代半ばで私立大学の教授に転身した。「Fは、生涯現役だなぁ。うらやましいよ」と、Fさんの同期が語り合っていた。
幅広く銀行業務検定試験に合格していた女子行員のMさんは、人事部の研修担当に異動になって、活躍の場を与えられた。研修の仕事を通じて、人が成長する姿を見ることがうれしかったそうだ。その後、勤めていた銀行は破綻したが、今は企業研修を行うフリーランスとして活躍している。
字数の関係で具体的には紹介できないが、三度の飯よりも人に会うことが好きで、営業していればそれだけで充実感を得ることができるという社員もいる。また興味ある研究や開発に取り組んでいる技術者もいる。
この仕事好き好き型(Bエリア)の中では、営業好きや技術職は比較的多いパターンである。これらの仕事は、総じて汎用性や専門性が高いので、退職後も生涯現役として活躍している人が少なくない。そして彼ら彼女たちは、明るい雰囲気を持ち、「いい顔」の人が多いのが特徴だ。出世型(Aエリア)とは、そこが異なっている。
■与えられた仕事であっても、それを自分なりに消化・工夫する
宮崎アニメや北野たけし監督作品などにかかわり、日本映画音楽の第一人者として長く活躍してきた久石譲氏は、与えられた仕事というか、制約や枠組みのある仕事に味を付けるほうが、自由にやれと言われるよりもやりやすいという趣旨の発言をされている。
「自分は何をすればいいのか」をいくら頭で考えても、答えはなかなか出ない。まずは今、取り組んでいる仕事から、何かできないかと発想することが実際的である。与えられた仕事を自分の個性と照らし合わせて工夫しているのが、このエリアの社員だ。
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