オックスフォード卒の私は小学校英語に反対

日本の英語教育を変えるキーパーソン 水野 稚(4)

水野:教育によって、たとえば一発逆転ができると考えるのは、親ならばアリだと思うんですよ。私も最初から東大、オックスフォードなわけではなく、最初は短大出です。それで1年、銀行員をしていました。そのときに世の中から受ける扱いが嫌で、これはトップとかセンターに行かないとダメだなと思って、東大やオックスフォードに行ったのです。

でもね、答えはないんですよ。親が知りたい答えはない。それは親御さんたちもわかっている。でも、もしかしたら、親御さんたちは、少しでも本音を言ってくれる専門家を探してる、ということですかねぇ。できないかもしれないと思っているところに、「楽しくやれば英語だってできるよ」と言われると、決心が揺らぐじゃないですか。希望は持たせられないかもしれないですけど、勉強ができない子はしなくていい、というのも、私は教育の大事なところだと思います。

だから、英語教育は、皆に必要なわけではない!と、できなくても構わないんだ!と主張します。これを言ってくれる人を探している親御さんも、けっこういるのではないでしょうか。

英語ができなくても、しっかり暮らしていけます。グローバル、グローバルとシュプレヒコールを上げているのは幻想です、と私は言ってあげて、安心させてあげたいです。

英語なんていらない

安河内:グローバルが幻想だとまでは思わないけれど、英語だけがすべてではないとは思います。英語をあきらめても、人間の能力というのはいろいろあるわけだから、別の分野でそれを開花させれば、大丈夫だ!と思います。英語ができなかったら人生、終わりみたいに考えるのは、よくない。

水野:拍手!

安河内:私なんて、こんな英語の専門家みたいに偉そうな顔してるけど、分数の割り算も自信ないもん。

水野:あ、私も!

安河内:われわれはたまたま英語が得意だからこういう仕事をしているだけであって。

水野:そうそう、私たち英語しかできないから、ここに必死でしがみついてるだけで。

安河内:そうですよ。偉そうな仕事をしていても、因数分解もまともにできない。英語だけで勝負してきている。それも英語だって、言うほどできないですよ。

水野:じゃあ、私なんてもっとできないですよ。

安河内:人間、いろいろな部分で生きているんですよね。

水野:でも、それでいいんですよね。

安河内:いいんですよ! 自分の立ち位置でそれぞれが社会に貢献しているんです。

水野:だから、やっぱり小学校から英語なんていらなくないですか?

安河内:……そこだけは平行線でしたか。

最後にもう一度はっきり言っておきましょう。小学校で週に数時間、英語をやったくらいで、英語がペラペラになるなどという幻想を持つと、また、英語教育に落胆することになるだけで、反動でめちゃくちゃになるでしょう。冷静に、じっくりと構えるべきです。

水野:これで失敗したら、もう立て直せないくらいの覚悟は必要。ここまで期待させちゃったら。

安河内:小学校で英語を学ぶようになったからといって、何か劇的な効果がある、ということではないですからね。そこまでではないはずです。今よりは、ちょっとよくなるくらいの期待はできるけれど、皆ができるようになるというふうに、国民的に期待すると、きっと落胆から来る反動で、またおかしな方向に行くでしょう。過度の期待によって振り子があっちに行ったりこっちに戻ったりして、めちゃくちゃになる可能性があります。

でも、よくはなると思いますよ。子どもたちのチャンスは増えるのだから、いいことなのです。英語教育にかかわる人にも、直接はかかわっていない人にも、結局はかかわりのあることなんですよ。だからね、私は願っているのです。皆で、少しずつよくして行きましょうよと。専門家だけではなく、本当に皆で考えて、意識して。

水野:文科省の委員をされている安河内先生がここまで言ってくださっているのですから、私もそこは心から賛同します。しっかりやっていきましょうね。

安河内:よろしくお願いします。今日は長い時間どうもありがとうございました。

水野:こちらこそ、ありがとうございました。

(構成・撮影:宮園厚司)

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