音声訓練を土台に
水野:結局、音声教育です。コミュニカティブではなくて「音声」プラクティス。
安河内:それは私も賛成です。やはり型を刷り込むための音声訓練というものを土台にして、柔道と同じで型の刷り込みを徹底的にやって、乱取りをやる。
水野:それはパターンプラクティスで日本の教育でもしばらくやっていたのですよ。
安河内:私は、パターンプラクティス(英文法を身に付けるための学習法)は絶対に必要だと思います。
水野:私もそう思います。ただ、コミュニケーションとかコミュニカティブとかいうものは、それぞれ皆さん、自分なりの理解の仕方があるようで、統一されたものがないんですね。
安河内:コミュニケーションの定義が、人によって、先生によって違っているのは問題がありますね。日本人の悪い癖として、たとえば、パターンプラクティスがダメそうだとなると、全部を対話型にして、対話型がダメそうだとなると、今度は全部をパターンプラクティスにする。文法がダメだとなると、また文法は全部やめてしまう。その辺のバランスの悪さというのが、これまでの英語教育がうまくいっていないひとつの大きな要因だと、私は感じています。
水野:パターンプラクティスは型を学ぶのには非常にいいですし、日本人向きでもあると思いますよ。
安河内:私も日本人向きだと思います。よく「This is a pen.(これはペンです)」という英語は使えないと言いますね。でも、それを「This is Mr. Yamada from Japan.(こちらは日本から来た山田さんです)」というふうに、パターンを応用して自動化すれば、どんどん自分の言葉になるのです。「パターンプラクティスで型にはめた英語は不自然だから、ネーティブ・スピーカーから変に思われる」なんていう人がいますが、それはないですよ。
英語はアメリカやイギリスの言葉か
水野:ネーティブの中にも、「私、This is a pen.なんて言ったことがないわ」と批判的な人がいるんですよね。
安河内:そういうことをアメリカ人の専門家なんかに言われると、皆、ひるむんですよ。英語に自信がないから。これは、私ははっきり言っておきたいのですが、英語は今や、アメリカの言葉でもイギリスの言葉でもないんだから、あまりアメリカ人やイギリス人におびえる必要はないと思います。
水野:でも、やっぱり彼らのものですよ。
安河内:もちろん、そうなんだけど……。今や、英語が世界で果たしている役割を考えたら、彼らだけのものではない。
水野:いやいやいやいや。「私たちはネーティブ・スピーカーだ。あなたたちの英語は間違っていると」言われたら反論できないですよ。
安河内:子どもたちに教えるときに、「英語はアメリカやイギリスの言葉だ」と最初に教えちゃうと、そういう固定概念ができてしまうし、親もそういうふうに考えるようになる。たとえ、最初は“建前”だとしても、英語というのは非ネーティブでも世界で使っている共通語なんだという前提を持つべきです。
水野:現状を見ると、そう言い切るのはどうでしょう。世界共通語に近いとは思いますが。
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