「ファンが消えた」プロ野球キャンプの驚愕実態 例年にぎわう「赤ヘルの街」も大きなダメージ

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福岡ソフトバンクホークスの春季キャンプと言えば、宮崎キャンプでは最も人気があった。宮崎市生目の杜運動公園に向かう朝のシャトルバスにはファンの長い行列ができていた。広い駐車場は九州各地のナンバーの車で埋まっていた。

そのファンを当て込んだ屈指の出店数でも有名だった。鶏の炭火焼きなどの宮崎グルメや焼き肉、弁当から地元名産品、土産物まで。見て歩くだけで30分くらいかかる「商店街」の体をなしていたが、これらもすべてなくなった。春季キャンプで球団はキャンプオリジナルのグッズを販売する。これもファンには大きな魅力だったが、当然これもなし。

宮崎市のソフトバンクキャンプ。無観客を告知する看板(写真:筆者撮影)

筆者は駐車場でファンと思しき人から「グッズだけでも売ってもらえないのか」と声をかけられたが「今年はお店は一切出ていない」と伝えるとがっかりと肩を落として帰っていった。

ソフトバンクは12球団で唯一春季キャンプのメイングラウンドに有料席を設けていたが、これも払い戻しになっている。

激変した広島のキャンプ地

春季キャンプを管理している宮崎市観光協会では、毎年、オリックス、ソフトバンク、巨人のキャンプへの出店業者を公募し、3つのキャンプ地に振り分けていた。飲食、土産物、特産品など数十店舗が出店し、大きな売り上げをあげていた。今年も無観客でのキャンプ実施が決まるまで、出店するつもりで店舗を公募し、選定していたが、これも中止になった。

同協会の担当者は「プロ野球の春季キャンプは、球団やマスコミ関係者はもちろん、県内外から多くのファンの皆様にご来場いただくことで、大きな経済効果を生んでいます。今年は、無観客になったことで、キャンプ地内での消費のみならず、宿泊、飲食、交通(レンタカー含む)など幅広い業種で影響が出ることになりました。来年以降は、ファンの皆様とともに球春到来を迎えられることを願っています」と話した。

宮崎市から車で1時間の日南市では、広島と西武がキャンプを張っている。日南市油津の広島キャンプは、地元住民の広島市民顔負けの熱心な応援で知られている。

JR油津駅は、3年前に真っ赤にペイントされた。また広島のキャンプ地である日南市天福球場までの道は、赤色で舗装され「カープロード」と命名されていた。商店街もにぎやかで、ファンは食事やショッピングを楽しんだものだが、今年は人の姿はない。

とりわけショッキングだったのは、油津駅前で広島ファンには聖地のようだった喫茶店が店をたたんでしまったことだ。近隣の住民に話を聞くと新型コロナ禍による廃業のようだが、この店には選手や「カープ大好き芸人」なども顔を出していただけに、喪失感は大きい。

しかも今年の春季キャンプは二軍だけとなった。一軍は昨年までの2次キャンプ地である沖縄県沖縄市になった。地元にはダブルショックだった。「来年は戻ってきてくれるだろうか」と昼食を取った飲食店の主は不安そうに言った。

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