「ファンが消えた」プロ野球キャンプの驚愕実態 例年にぎわう「赤ヘルの街」も大きなダメージ

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油津の南隣、南郷では埼玉西武ライオンズの春季キャンプが行われていた。メイングラウンドは丘の上にある。その横には例年、日南市の名産品の出店があるが今年はそれもない。ブルペンは丘の下にあるのだが、そこへ向かおうとして係員に注意された。

報道陣はいちばん近い階段を下りるのではなく、遠回りして端っこの階段から降りなければいけない。選手との導線が重ならないように、徹底的に管理しているのだ。この遠い道のりを重たい望遠レンズを担いで上り下りするのは一苦労だ。

日南市の西武キャンプ。スタンドから選手を撮影する報道陣(写真:筆者撮影)

広島、西武のキャンプを迎える日南市観光協会によると、キャンプ期間中、「おもてなしブース」として、両キャンプ地に10店舗ほどが出店している。

「例年、非常に多くの観客においでいただき、出店業者の皆様にとっても、年間売り上げの中でも大きな比重を占めています。その後のお取り寄せ需要なども含め、その収入に関わるダメージは計り知れないものがあります」と担当者は語る。

さらには宿泊施設、リネン、クリーニング業・食材が動かないことによる1次産業・タクシーやバス、JR等の旅客運輸業、そして市内に9つある焼酎蔵の売り上げも非常に大きな影響を受けているとのことだ。

水泡に帰したキャンプ受け入れの努力

日南市は、新型コロナ禍での春季キャンプを行うため、受け入れ態勢も数カ月前から整備してきた。消毒液や検温器など、感染防止対策に関わる資材の発注や観客の検温等の体調チェックブースの確保、またチェック済みの証とするマスクシールの作成、ソーシャルディスタンスを確保するための座席の管理など、多くの準備をしてきた。

さらに球団を受け入れるための対策として、球場内の執務室の確保やパーテーションの設置、球団と関わるスタッフの行動歴の記録とPCR検査(約80人)、週1回のスクリーニング検査の実施、報道機関の導線確保とプレスルームの設置など、とくに球団関係者に感染のリスクが発生しないように気を配ってきた。やむをえないことだが、こうした努力の大部分が水泡に帰したのだ。

宮崎県は観光立県を目指し「多彩な宮崎ツーリズムの発信」を打ち出している。宮崎市のように多彩なコンテンツがあるエリアでもダメージは大きいが、人口5万人、春季キャンプにかける期待が大きかった日南市のダメージはさらに大きかった。撤退する店舗や業者もあったので、来年以降にも影響は残るのではないか。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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