原発推進の限界も露呈、東京電力の株主総会 反原発の議案は全て否決

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総会では数土会長が議長を務めた

現在、冷温停止状態を維持しつつ、福島第一原発の廃炉作業を支援している福島第二原発(全4基)。同原発の廃炉を求める株主提案に対して、取締役会では、今 後の扱いは「未定」であり、国の政策や地域・社会の人々の意見を踏まえ検討するとして、廃炉決断の可能性に含みを持たせている。福島の県議会や県民の大多数が再稼働に反対している限り、早晩、廃炉を迫られるのは必至と見られる。

また、大震災2カ月前に着工し、大震災によって建設中断 となっている東通原発についても、建設再開は難しい。東電経営陣は「国のエネルギー政策に関する具体的議論や地域・社会の方々の意見、当社の経営状況など を踏まえ決定する」として、同原発建設中止の株主提案は否決された。だが、同原発の南側に隣接する東北電力東通原発1号機の敷地内断層に対して、原子力規制委員会は活断層との見方を強めており、この地域一帯が原発立地上、不適と認められる可能性は高い。また、原発の新増設(工事進捗率の高い島根3号機、大間原発を除く)については、現政権も想定していない。

新潟県知事の同意はほど遠い

一方、柏崎刈羽原発(全7基)について東電経営陣は、是が非でも再稼働を実現したい考え。だが、昨年9月に規制委へ新規制基準適合性審査を申請した6、7号機は、敷地内断層や地下構造の問題などから審査が難航しており、合格のメドは立っていない。

再稼働の条件となる地元同意に関しても、立地自治体の一つである新潟県の泉田裕彦知事が「福島第一原発事故の検証と総括が終わらない限り、再稼働の議論には入らない」としており、同意を得られる保証はない。

東電の廣瀬直己社長は、関連した株主の質問に答える形で、「知事のお考えはごもっとも。われわれとしては、原子力安全改革プランの中で事故の検証をしっかり 行い、福島の方々へしっかり謝罪していく。また、新潟県の技術委員会でも事故の検証を1年以上にわたって議論していただいており、そうしたことで知事のご理解を得たい」と語った。

しかし、泉田知事はこの廣瀬社長の発言に対し、「社長が総会で何を言おうと、メルトダウン隠蔽について虚 偽説明し、約束した安全対策を実行しない、事故責任を取らないなど、信用できない東電を理解することは困難です」と、ツイッターでコメントしている。知事 の理解を得るには程遠い状況だ。

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