2021年は「デモクラシー」にとって試金石に
2021年は、多くの不透明性や不安定性とともに幕を開けた。1月6日の連邦議会乱入事件は、長年、民主主義諸国において盟主の役割を果たしたアメリカの信用が大きく揺らいだ瞬間でもあった。他方で中国政府は、経済活動が勢いよく再開したことを世界にアピールし、民主主義体制が持つ脆弱性を繰り返し批判して自らの政治体制への自信を深めている。
アメリカに本部を置く国際NGO団体であるフリーダム・ハウスがまとめた年次報告書によれば、過去14年間にわたって、「民主主義の後退(democratic decline)」が続いているという。このような民主主義の後退と権威主義体制の台頭は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、よりいっそう進行しているようだ。
他方で中国は、権威主義体制下で技術革新を次々と成功させ、イノベーションにおける優位性を確立しつつある。さらには、ミャンマーにおけるクーデターと、それによる民主的な政治体制の権力喪失は、東南アジアに暗い影をもたらしている。はたして民主主義体制は、最適な政治体制なのであろうか。多くの途上国政府の中でそのような疑問が抱かれても、不思議ではない。
多くの政治学者が近年指摘しているように「民主主義の後退」がこれからも続いていくのだろうか。あるいは、2度の世界大戦と冷戦を勝ち抜いてきた民主主義諸国は、中国の台頭という新しい挑戦に対しても、その優位性と魅力を十分に示すことが可能なのだろうか。2021年はそれを占ううえでの重要な分岐点となるであろう。そして、菅義偉政権下の日本外交にとって、試金石となる問題ともなるであろう。
ジョー・バイデン大統領は、昨年の大統領選挙の最中に、「デモクラシーのサミット」の開催を重要な外交目標に掲げた。大統領選挙に勝利した後に、直ちに日本、オーストラリア、韓国といった民主主義諸国と、まず電話会談を行ったことは、そのような自らの立場を示すものでもあった。
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