さらに、EUを完全に離脱したイギリスは、2月1日に環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟申請を行うことで、よりいっそうインド太平洋地域への関与を強める意向を示した。イギリスのTPP参加は、この地域におけるルールに基づく開かれた国際秩序を維持していくうえで、日本にとっての重要なパートナーとの協力関係を強化することにつながるだろう。さらに、イギリスにとってはコモンウェルスの中核的な諸国であるオーストラリア、カナダ、シンガポールなどとの協力関係を強化する契機になる。
中国政府が、海警法改正により、尖閣諸島や台湾に関してより強硬で、武力行使も辞さない威圧的な姿勢を示す中で、日本はほかの民主主義諸国との協力を強めて中国の国際的ルールを無視するような行動を牽制しなければならない。
そのような中でイギリス政府は、今年G7サミットの開催国として、インド、オーストラリア、韓国というインド太平洋地域の3つの民主主義国をサミットに招き、「7+3」でデモクラシーの10カ国、いわゆる「D10」によるサミットとする意向を明らかにした。それがどのような内容の会合となるかは未知数であるが、もしも民主主義諸国の協力が今後強化されていくとすれば、2021年はデモクラシーが勢いを取り戻す年として記憶されることになるのではないか。
日豪が中核となる「自由で開かれたインド太平洋」
そのようなインド太平洋地域における民主主義の将来を考えるうえでカギを握るのが、日豪関係である。オーストラリアのモリソン首相は、コロナ禍となってから最初の外国訪問として、昨年11月17日に日本を訪問して菅義偉首相との対面での首脳会談を行った。そこでは友好的な空気の中で会談が行われ、日豪関係が「基本的価値と戦略的利益を共有する『特別な戦略的パートナー』」であり、両国が「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて共に取り組んでいく」ことが確認された。
日豪関係は一般的な二国間関係にとどまるものではなく、インド太平洋地域における多国間協力の推進のための「エンジン」になりつつある。かつて太平洋戦争で激しい戦闘を行った両国の協力関係は、ヨーロッパ統合における仏独関係にも比肩するものとなるかもしれない。
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