アマゾンCEOを退任「ベゾス氏」の微妙な引き際 コロナ禍で業績は絶好調の一方、課題も山積

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ベゾス氏は、近年はアマゾンの日常業務のほとんどから身を引き、ジャシー氏を含め代理を務める2人の幹部に権限を委譲していた。ベゾス氏はアマゾンの未来と自身の個人プロジェクトに取り組んでいた。2013年にはワシントン・ポスト紙を買収し、所有する宇宙旅行会社のブルー・オリジンに年間10億ドル以上費やしていると語っていた。

CEO退任後も、会長としてアマゾンに残る。写真は2002年1月撮影(写真:Chester Higgins Jr./The New York Times)

2年前に離婚したことでゴシップ紙の定番ネタとなり、プライベートでも追い回されるように。億万長者バリー・ディラー氏が所有するスーパーヨットなどもその舞台となった。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックにより、ベゾス氏は昨春からアマゾンの日常業務に戻ることになった。新型コロナの影響でネット通販需要が急増し、労働やサプライチェーンといった課題に直面する中、ベゾス氏は連日電話会議を行って在庫に関する意思決定を助け、政府高官と対話し、またアマゾンの倉庫に足を運んだ際にはマスコミにも大きく取り上げられた。

アマゾンは今では安定を取り戻した。多くの人がネット通販を求め、1.5億人以上の会員を持つ同社のプライムサービスを利用する中、業績成長も続いている。アマゾンが2日に発表した第4四半期の決算では、売上高は過去最高となる1256億ドルを記録し、純利益は72億ドルと前年同期比2倍以上となった。同社の1四半期の売り上げが1000億ドルを超えたのは初めてのことだ。

アマゾンからベゾス氏が消えることはない

アマゾンは、経済すみずみに進出するという野望を撤回する気配は見せていない。ブライアン・オルサフスキーCFOは、投資アナリストたちとの電話会議で、同社が将来の成長の前に 「先行投資」 していた時代が報われたと語った。

同氏によると、アマゾンは今後もクラウドコンピューティングインフラと食料・雑貨への支出を増やし、物流業務を拡大していくという。特に、急成長しているラストワンマイル配送ネットワークは、荷物を届けるために50万人の契約ドライバーに依存している。

アマゾンからベゾス氏が消えることはないだろう。「ジェフは本当にどこにもいかない」とオルサフスキー氏は述べ、今回の変更では「誰が何をしているかについて、さらに改革を行った」と付け加えた。ベゾス氏は引き続きアマゾンの筆頭株主であり (提出書類によると同社の株の10.6%を所有している) 、取締役会にとどまる。

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