オンライン授業は「より面白く」が必須の理由 リクルート出身教育委員会トップ語る学校の今

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平川:オンライン授業になれば、さらに面白い授業が求められるでしょう。リアルな授業なら、授業そのものが面白くなくても、好きな子を見たり手紙を書いて回したりと、友だちがいることで子どもたちは授業の時間をやり過ごすことができるかもしれませんが、1人ぼっちのネット上で知識注入型のチョークアンドトークを受けていたら、子どもたちはすぐに飽きます。

本質的な問いを立て、先生と子どもがインタラクティブにやりとりをする、そういう授業でないともちません。ひるがえって、リアルな授業でも、当然、ファシリテーションが重要になってくるわけです。

図書館で借りる本が「プロ野球年鑑」だっていい

ピョートル:2035年に中学校を卒業する子どもたちには、どういう能力やスキルを培ってほしいですか。

平川:自立とクリエーティビティーですね。中学校の校長をしていた頃は、「自立と貢献」と言っていたのですが、最近は、自分も楽しくて人も楽しませることのできるクリエーティビティーのほうが、結果的に貢献もしているのではないかと思うようになりました。

その人がその人らしくあるためにもクリエーティビティーは大事。本来、誰にでもクリエーティビティーはあるはずなのに、学校や家庭で「もっと勉強しなさい」と言われているうちに取り除かれてしまう。

例えば、図書館で『プロ野球年鑑』を借りてきた子どもに、お母さんが「そんな本読まないで、学校の推奨図書を読みなさい」と言う。でも、『プロ野球年鑑』を読めば、小学校で習う漢字のほとんどを学べるし、打率も書いてあるから割合の勉強にもなる。勉強できることはたくさんあります。それなのに、なぜ取り上げてしまうのか。

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根本的な問題は、おそらく受験や知識を問う問題による学習評価でしょう。学齢にも弊害があると考えています。1人ひとり進む速度は違うし、興味の度合いも違うのに、「この学年はこれを学ぶ」と規定することに意味があるでしょうか。

小学2年の先生が3年で学ぶ漢字を黒板に書くと、「あ、これはまだ勉強していなかったね」と言ってわざわざ消してひらがなにする。それは明らかにおかしい。平等主義が誤解されている。アダプティブであることをこそ求めるべきではないでしょうか。

クリエーティビティーは、安心安全の場でないと生まれません。江戸時代に文化が花開いたのは、戦争がなくなり、理由もなく殺されるようなことがなくなったからです。これから経済的に大変になる家庭もあるかもしれません。そのときに、セーフティーネットを充実させて子どもたちに安心安全の場をつくるということも考えていかないといけないと思いますね。

ピョートル・フェリクス・グジバチ プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者

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​Piotr Feliks Grzywacz

ポーランド出身。モルガン・スタンレーを経て、Google Japanでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』(かんき出版)など著書多数。

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