これがすごい。軍手をした男たちが、一心不乱にカートリッジから段ボール箱へ本を移している。移しながら、3次元のパズルを解いている。本のサイズはさまざまだ。それを無駄なく超高速で詰めている。どうしたら効率良く詰められるかを計算しながら、恐るべきスピードで本を扱っているのだ。
解説してくれた賀澤隆一さんによると、1分間で1箱に35冊から40冊を詰めるのが目安になっているという。1冊あたり2秒以下。明らかにそれより早い動きをしている人もいて、もはや反射の域だ。絶対にこの人たちは、3Dのテトリスも上手いと思う。
どれも沢山の出版社が出す沢山の本を沢山の書店に届けるために作り込まれたシステムだ。しかし日販は、現状がベストとは考えていない。これでもまだまだ、少ない種類の本が大量に刷られていた時代の名残りが大きく、少数多品種に最適化したシステムに作り替える必要がある。書店からは、ジャンルごとに揃えて箱詰めして欲しいという要望もあるそうで、そこへの対応も求められている。まだまだ、進化の余地ありだ。
一生かけても読みきれない…
ともあれ、書店に並んでいるのは、機械を使い、人手を使って仕分けられた本だということが実感できた。その数、1日200万冊ということは、1冊が200ページとして1日4億ページ、1ページに文字が4000字あるとして1兆6000億文字。それが1日で日販の王子流通センターを駆け抜けていく。1日は8万6400秒だから、秒速2千万文字。ハイパー読書家として知られるライフネット生命保険の出口治明会長でも、とても全部は読み切れまい。
などと計算していたら「コミックスと雑誌は別のセンターで扱っています」という。まだあるのかと驚き、その数を聞いてまた驚いた。それも一日あたり200万冊なのだという。つまり、合わせて1日400万冊の本や雑誌やコミックスが、日販の流通経路に乗って動いているのだ。
この日本という国は、本に溢れた国だ。そう考えると、ボクの手元にある一冊がたどり着くのは、まさに千載一遇。今日、鞄に入れてきた本も例外ではない。来訪記念に検印を押してもらっておいて、本当に良かった。
(構成:片瀬京子、撮影:尾形文繁)
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