宝島社が“反オンライン"を貫くワケ オンラインに出て行く理由がない

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 テクノロジーのさらなる進化は、単にメディアを「紙」から「ウェブ」へ置き換えるだけでなく、メディア業界の形そのものを一変させます。現在進行中のこの大波は、明治・大正期以来の、100年に一度の大変化です。
 では今後、メディアはどう変わっていくのか、5年後にはどんなメディア新世界が待っているのか、そして、メディア企業とメディア人は、どうすればウェブ時代に稼ぐことができるのか――それを、メディア業界の最先端を走るキーパーソンと考えます。
 第2回目は、女性ファッション雑誌などで知られる宝島社を取り上げます。なぜ出版不況の中でも、宝島社は豪快に稼ぐことができているのか。その秘密を探ります。
宝島社がこだわるのは雑誌とモノ。オンラインには背を向けている

※ 関連記事:宝島社はなぜ、出版不況でも稼げるのか?

ファッション雑誌は紙がいい?

――宝島社はオフラインで十分に稼いでいますが、オンラインに興味はないのでしょうか。

わが社の場合は本当に“反オンライン”ですね。社長の蓮見清一がそのような考えを持っていますが、われわれもそれが正しいと思っています。

雑誌や書籍の流通は、コンビニにしても、書店にしても、極めてよくできていますし、全国津々浦々に配送できます。取次がしっかりしているので、資金回収の面でも優れています。ビジネスとして非常にやりやすいシステムです。特に、書店という場所は、スーパーや他業界の小売店と違って、ふらっと寄ってみること自体がエンタメになるというか、非常に読者を吸引しやすい場所として成立しています。

このよくできたシステムを、オンラインを強化することで、わざわざ壊すというのは、ビジネス上の利益に反していると思います。音楽業界を見ると、安易にネット配信に動いたために、CDショップやレコード屋が街からどんどん消えてしまいました。

――“反オンライン”は宝島社のポリシーであって、今後も、オンラインへシフトする可能性はないということですか?

そうですね。逆にいうと、オンラインをやって儲かるのかを、みなさんに聞いてみたい。

――今のところ、なかなか儲からないです(笑)。

ソーシャルゲームなどでは、ビジネスとして大成功することもあると思いますが、普通のコンテンツを売っていくのはなかなか難しい。タダには勝てないですから。

――ファッション雑誌はウェブよりも紙のほうが相性はいいのでしょうか。個人的には、「よくこんな重い物を持ち歩けるな」と思ってしまうのですが。

ファッション雑誌に限らず、書籍や文庫といった本のパッケージ機能は、今後も重要であり続けると強く信じています。

ただ、ファッション雑誌の小型版を出版しているところもありますし、そうした試みは必要になるかもしれません。雑誌は広告が入るとどんどん重くなるので、紙を薄くしたりして、どうにかできないかとは考えています。

幸いなことに、コンビニの数が増えていて、5分や10分で家に雑誌を持ち帰れるので、重くても買っていただけるのだと思います。そもそも、大型のファッション雑誌は、持ち歩くというより自宅で読むケースが多いので、重くてもそんなに不便はないかもしれません。

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