「新刊本」が集結する現場へ行ってみた! 1日200万冊の本をさばく日販の技術

✎ 1〜 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 18 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

検印も入構手続きも無事済んで、センター内部へ入る。とたんに、書店ともウチの本棚の前とも違う、新鮮なインクと新しい紙の匂いがした。本の館にやってきたのだという実感がググッと湧いてくる。ここでは出版社から届いた本を書店に振り分けているのだが、2通りの振り分け方があるという。

(1)新刊の振り分け方

日販王子流通センターを通り過ぎる1日あたり200万冊のうち、半分に当たる100万冊は新刊だ。何をもって新刊というかというと、出版社ではなく、印刷会社から直送される本をここではそう呼び習わしている。なので、発売日からしばらく経っていても売れ続けている本、直木賞などを受賞して一躍注目を浴びた本も、何百部という単位でまとまって入庫すれば、新刊扱いとなる。一日あたり、400点ほどがここで扱われる。

画像を拡大
ソーターが書店ごとに振り分けていく

ここで、言葉の使い分けについてひとこと。○冊と言った場合、そこには同じ本が何冊あるかは頓着せず、トータルの数だけを示す。1種類が100冊でも、100種類が1冊ずつでも同じ100冊だ。そして○部という言い方には、それがすべて同じ本という意味が含まれている。本のタイトルを数えるときは1点という。たとえば、ある出版社からみると、今月は10人の著者による10点の新刊を発売し、それぞれ100部ずつ印刷したので、その合計は1000冊、ということになる。

これを全国の書店へ配送する段ボール箱へ、人力で仕分けていく。一人が担当する本は4~5点。流れていく箱に添付された指示書を見て、自分が担当する本を入れるか入れないかという判断を繰り返す。新刊ラッシュの毎月20日過ぎ、年末・年度末・ゴールデンウィークの前は大変な忙しさになるという。

新刊が詰められた箱は、最後に重さチェックが受ける。これで、欠品や入れ間違いがないかを確認するのだ。

(2)準新刊と旧刊

(1)の新刊ほどではないけれども、売れ続ける本がある。主に、発売後1カ月の本と、書店での売上げランキング上位に入り続ける本だ。近いうちに書店から注文が入る可能性がある。従来なら、書店から注文を受けた時点で、出版社に注文をする。しかし、それでは時間がかかってしまう。

注文に応じて在庫をピックアップ

注文本の中に「週刊東洋経済」を発見

アマゾンの登場で、注文した本が翌日手に入ることは驚きではなくなった。しかし、かつて書店に本を注文したことがある人は皆知っていると思うが、取り寄せにはかなりの時間待たされた。それは、書店が発注を出す先の取次に、在庫がなかったからだ。発注を受けた取次から出版社に発注された本は、どこかにある出版社の倉庫から取次に送られ、その書店に送られるほかの本と一緒に、段ボール箱に入って届く。だから書店に注文してから手元に届くまで、時間がかかっていたのである。

そこで日販は、2008年に王子流通センターを全面リニューアルした。ここでは、約10万点、計750万冊の在庫を持っている。一冊が300グラムとして重さは約2000トン。確か、スペースシャトルの重さが2000トンだったはずである。この膨大な蓄えがあるので、その都度、出版社の倉庫から送ってもらう必要がない。ここに在庫されていない本が注文されたときだけ、従来の方法で出版社に注文をする。

次ページカートで本をピックアップ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事