桑田真澄が高校球児の「投げすぎ」を危惧する訳 導入から1年の球数制限「1週間500球」に疑問

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桑田氏に対して前出の山本医師は「1週間500球」という数字はともかく、球数制限が必要だ、というメッセージが高校野球から発せられたことに意味があると語った。

それにも一理ある。2019年9月21日の第3回有識者会議の前に開かれたメンバーと都道府県高野連理事長との意見交換会では、「球数制限」の導入に反対する声が相次いだ。

このとき医療関係の有識者会議のメンバーが「うちの病院にどれだけ多くの肩、ひじを痛めた選手がやってくるのか知っているのか」と一喝し、有識者会議座長の中島隆信慶應大学教授が「時代が変わる中で高校野球は変わらなければならない」と理事長たちを説得して決議に至ったという経緯がある。頭が固い高校野球指導者をここまで譲歩させるだけでも、成果だと言うのだ。

5年前に提示した投球障害の是正策

しかし桑田氏の憤懣(ふんまん)にも背景がある。実は2015年11月7日に、神戸の同じ会場で開かれた第26回臨床スポーツ医学会のシンポジウム「わが国特有の投球障害をいかになくすか」で、桑田氏はスポーツライターの玉木正之氏や整形外科医、日本高野連関係者などとともに「投球障害是正の具体策」として、

  • ・アマチュア野球からのマスコミの撤退
  • ・指導者の資格制の導入
  • ・投球数制限、7回制の導入
  • ・冬季の試合禁止
  • ・野球座学・検診の普及
  •  

を提示しているのだ。

5年が経過したが、「1週間500球」を決めた以外は何ら進展がない。このことへのいら立ちがあるのだ。

最後に、会場の大学病院の理学療法士から、2020年の秋季東北大会の決勝出場校で、1週間で500球に到達した投手が出たことが報告された。その投手は決勝では救援で登板して限度いっぱいの19球で降りた。「球数制限」がなければ決勝も先発で投げていた可能性があったとし「球数制限」に一定の抑止力があったという見方を示した。

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