桑田真澄が高校球児の「投げすぎ」を危惧する訳 導入から1年の球数制限「1週間500球」に疑問

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現時点でも1人の投手に「1週間500球」を投げさせる高校はそれほど多くはない。筆者はむしろ一部の指導者が今後「500球までは大丈夫」と判断して、リミットまで酷使するのではないかという危惧を覚えた。

桑田氏の厳しいメッセージは、医学界ではなく野球界やメディアに向けて発せられたものであるのは言うまでもない。

2014年に「ピッチスマート」が導入されたときには、アメリカのアマチュア野球界はこれを異論なく受け入れ、遵守した。しかしながら、日本の高校野球界は「ピッチスマート」よりはるかに緩い制限であっても、容易に受け入れようとしない。

高校野球改革の抵抗勢力

筆者は高校以下の野球指導者と話す機会が多いが、選手の健康を重視する指導者は若手を中心に増えていると実感している。しかし年配者を中心に、科学的、医学的知見を軽視し、自らの経験論や精神論を都合よく振り回す指導者がいまだにいるのも事実だ。

また「伝統ある甲子園」を神聖視するあまり「高校野球を1ミリも変えたくない」というファン、関係者もいる。そうした人たちが高校野球の抜本的な改革の抵抗勢力になっている。

パネルディスカッションが終わってから筆者は桑田氏と言葉を交わしたが「まだこんな状態ですか……」と嘆息していた。桑田真澄氏は早稲田大学や東京大学大学院で学び、野球界屈指の知性派だ。今年は巨人コーチとしての手腕に期待したいが、同時に少年野球界の動静を今後も注視してほしいと思う。

2020年度の高校野球の競技人口はピークの2014年の17万0312人から19%も減少し、13万8054人にまで減った。スポーツの環境がどんどん進化する中で「昭和のスポーツ」である野球は、時代から取り残されつつある。

「球数制限」3年の試行期間の1年が過ぎた。「コロナ禍で何もできなかった」は言い訳にすぎない。日本高野連、高校野球関係者は、あと2年の間に、高校球児の未来に向けた前向きの改革に取り組むことができるだろうか?

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