さらに、小中学生と高校生では「野球障害」の中身が異なること。骨端線が閉じていない小中学生期には、投球過多によって上腕骨内側上顆障害(リトルリーグひじ)や離断性骨軟骨炎(OCD)など「野球ひじ」と呼ばれる障害のリスクが高まる。
しかし高校生になれば骨端線が閉じて骨の成長が止まり「野球ひじ」は減少し、それまでとは別種の「野球障害」のリスクが高まる。また高校生の障害は中学校以下で既往歴がある選手に顕著に見られる。
渡邊医師の発表によると整形外科医のほとんどが、小中学校時代の「投球数制限」には賛同しているが、高校生の「球数制限」には約半数しか賛意を示さなかったということだ。つまり「高校生の投球制限」については、整形外科医の間でも問題意識が共有されたとは言い切れないのだ。
日本高野連の有識者会議は7カ月、わずか4回で提言に至ったが、議論はまったく足りていないというのが、率直な印象だ。
桑田真澄「はっきり言って壊れます」
4人の発表のあとのディスカッションでは、桑田真澄氏が口を開いた。桑田氏は「1週間500球」という球数制限にはまったく意味がないと切り出し、2019年夏の甲子園では優勝投手、準優勝投手が16日間で5登板、600球以上を投げたが、体も精神的にもできあがったプロ野球のエース、巨人の菅野智之でさえも16日で3登板、300球いかないレベル、MLB時代の田中将大は3登板で200何球かしか投げないとし、「成長期にある高校生がプロの倍も投げるというのはいかがなものか」と疑問を呈した。
さらに、桑田氏自身も高校時代に4連投、5連投で優勝したが「はっきり言って壊れます」と強調した。桑田氏の周辺にはいい投手がたくさんいたが、みんな壊れていったという。桑田氏は運良く残ったが、自分の経験からも球数制限と登板間隔は非常に重要とし、「ピッチスマート」を1日も早く導入すべきと強調した。
さらに「なぜ導入できないか」については、球数制限のメリットは「選手」にあるが、デメリットは開催する高野連、放送するメディアなど、期日内に日程消化をしなければならない「大人」にあるとした。桑田氏は「それが歯がゆい」といった。
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