アップルの有力取引先が食用コオロギを売る訳 近い将来、食べるのは「当たり前」になる?

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早速、太陽グリーンエナジーの荒神(こうじん)文彦社長に経緯を聞こう。同社がコオロギの生産を開始したのは2018年だ。

「実は、その前にグループでエネルギー分野に参入するという大きな決断がありました。そのきっかけは2011年3月に起きた東日本大震災でした。当時、当社の本社がある埼玉県嵐山町のこの一帯は計画停電の区域に入っていたため、一時ソルダーレジストの生産停止を余儀なくされたのです」

荒神社長はコオロギの飼育・販売を「日本の農業問題解決」という大きな枠組みでとらえる(埼玉県嵐山町の同社施設内で、筆者撮影)

ソルダーレジストは約8割が海外向けだ。サプライチェーンが途切れてしまうと、パソコンやタブレット、スマートフォンの生産に大きな影響が出る。そこで、同社は長期的な対応策を検討した。

「いつ大きな災害が起こっても対応できるように、これからは電力や水道を自前で賄えるようにしようと始めたのが太陽光発電でした」

すでに現在は、ソルダーレジストの生産に係る消費電力相当を太陽光で発電するまでになった。そのため同社は「クリーンエネルギープログラム」というアップル製品に使われる電子部品等をクリーンエネルギーだけで生産する取引企業全44社のうちの1社に名を連ねている。

食料自給率向上や就農人口減少を事業で解決

太陽グリーンエナジーでは、池の上にパネルを浮かべた水上太陽光発電を運用しているほか、閉鎖型の自社植物工場でサラダ用のベビーリーフも栽培。さらに天然光を利用しITを活用したイチゴのハウス栽培、メロンの水耕栽培も行っている。

同社が農業に力を入れている根底には、やはり年々減少していく日本の食料自給率や就農人口の問題があった。現在、農業に携わる方々の平均年齢は65〜70歳と高齢化していて、慢性的な後継者不足だ。担い手としてその多くを外国人に依存している状態だ。

荒神社長は危機感をあらわにする。「農業の現場はすでに外国人だけでなく、機械化に頼らざるをえない状況にあります。機械化が進んでいるといっても、個々の農家が一気に導入するのは難しい。また、栽培に関する技能も農家の方々の頭の中にはあっても必ずしもデータ化されておらず、跡継ぎがいないと素晴らしい技も継承されません。こうした問題を解決できないかということで事業を始めています」。

同社は上述の水耕栽培のほかに、将来、同じ施設内で魚の養殖も始める構想がある。実は、そこで大きな役割を果たすのがコオロギだという。

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