46歳「昆虫食」を究める彼女の真っすぐな生き方 「世界を救う」なんて意識の高いことじゃない

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「世界を救わない昆虫食」を標榜し、昆虫料理の魅力を伝えるライターのムシモアゼルキリコさんの半生を追いました(筆者撮影)
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第87回。

「世界を救わない昆虫食」を標榜

ムシモアゼルギリコさん(46歳)は、昆虫料理の魅力について広めるライターだ。昨今、昆虫食は「世界を救うかもしれない食材」として注目を集めている。ただギリコさんは、「世界を救わない昆虫食」を標榜している。つまり食べたいから昆虫を食べて、ルポを書いている。

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昨年の9月に発売された『スーパーフード! 昆虫食最強ナビ』(辰巳出版)では、セミ、バッタ、ハチなどの美味しい食べ方、レストランの紹介、ルポ漫画、とバラエティーに富んだ内容で昆虫食を紹介している。

ギリコさんは『神々のスマホ「昆虫食の女神の秘密」』(NHK)、『アウト×デラックス』(フジテレビ)など、テレビ番組でも大きく取り扱われたこともあるので、ご覧になったことがある読者もいるかもしれない。

2020年9月に発売された『スーパーフード! 昆虫食最強ナビ』(辰巳出版)

ギリコさんは、そもそもなぜ昆虫食に目覚め、昆虫食を広げようとしたのだろうか?

ギリコさんは、母親の地元である東京都杉並区高井戸で生まれ、父親の地元である港区南青山の表参道で育ったという。

昆虫食と言えば、長野県伊那市などが有名だが、ギリコさんの出身地は東京でも最もセレブな街の1つだった。

「私が子どもの頃は、まだそこまでオシャレな街って感じではなかったですね。今に比べたら、ずいぶん雑な感じでした。

子ども時代のことを思い出すと、食べ物のことしか思い出せないんですよね(笑)。よく外食に行くなかで父親が、ドジョウやスズメなどたまに変わったものを食べに行くって言い出すことがありました。

青山には、地元の料理、郷土料理みたいなものは一切なかったんです。その代わり、いろいろな文化が、そのままの形で混在していて楽しかったです」

ギリコさんの家の向かいは中華料理店で、毎日家の前で餃子に使うキャベツを絞っており、いつも緑色の汁が路上に流れていた。

仲のいい友達は台湾人だった。狭い部屋の中にはバカでかいチャウチャウ犬がいたし、友達の部屋には金色の布袋様が飾ってあった。一緒にいただいた家庭料理は薬膳料理で不思議な味がした。

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