アップルの有力取引先が食用コオロギを売る訳 近い将来、食べるのは「当たり前」になる?

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農業と漁業の両方にコオロギが役立つ。どういうことだろうか。もともと「エネルギー分野参入→植物や果物の栽培→廃棄物をコオロギに食べさせる」というつながりは想像できる。実際、参入のきっかけはそうだった。「今でこそ将来の人間のタンパク源の1つとしてコオロギ食が話題になっていますが、もともとは小動物や爬虫類のエサ需要が旺盛にあり、ペット向けにコオロギを供給できないかというのがそもそものきっかけでした」。

だが、農業・漁業の両方とコオロギはすぐには結びつかない。

閉鎖型の自社植物工場で生産するサラダ用のベビーリーフ。コオロギを含め農作物の水耕栽培と水産養殖を一体で行う手法『アクアポニックス』の確立に向けて試行錯誤が続く(筆者撮影)

「実は現在『アクアポニックス』という、農作物の水耕栽培と水産養殖を一体で行う手法に取り組むべく、模索を進めています。水耕栽培と水産養殖の過程では、野菜や果物の『残さ』などの廃棄物や排水などの処理が課題になりますが、こうした廃棄物を最小限に抑えるために大きな役割を果たすのがコオロギです。アクアポニックスにコオロギの飼育を加えることで、循環型工場ができる設計になっています」

この循環型工場の仕組みは以下のとおりだ。まず、コオロギは水耕栽培された野菜や果物の根や茎などの残さを餌として食べる。そのコオロギを養殖魚が食べる。これは近年供給不足になっている養殖魚のエサの代わりになる。さらに、養殖魚が生息する水槽の排水を農作物に与える。排水は魚の養分を含んでいることから農作物に有用だ。最後に、農作物を通して浄化された水を、再び水槽に返す形でうまく循環させる。この一連のシステムでは農作物への農薬や肥料は不要になるはずだ。

つまり、コオロギの養殖は、同社が実施しようとしているこのアクアポニックスに先駆けて、農業とともに実施しているという位置づけに進化しつつあるのだ。コオロギは養殖魚のエサの代替品にもなりうる。魚のアラなど養殖魚向けのエサは慢性的に不足しており、日本はその多くを輸入に頼っている。コオロギはこのエサと成分が近いため、その代わりになる可能性があるのだ。

将来は「月産1トン」を目指す

実際、コオロギは食用がにわかに脚光を浴びだしたが、現在のところはペット向け、養殖魚向けのほうが食用よりも販売単価が高い。しかも、食用は人が口にするため、ペットや養殖魚向け以上に十分な衛生管理が必要とされ、その分コストもかさむ。

一方、食用とそれ以外では生産の衛生基準や、輸出入時の基準などは法律で定められていないのが現状だ。そうしたなか、人が食べてもトラブルがないように一定以上の管理基準とモラルが必要とされる。太陽グリーンエナジーの管理はどうなっているのか。

「食用出荷分では菌検査のほか、従事者の体調検査を必ず行っています。コオロギの飼育そのものは家庭でもできるので、一見大規模参入もしやすい事業です。しかし明確な管理基準が定まっていない中で、人体に悪影響がないように生産者が意識しているかどうかはとても大事になってきます」

現在、同社でのコオロギの生産重量は年間1トンほどだ。主にペット、養殖魚のエサ、そして、人間の食用の3つの用途向けに、生、乾燥、冷凍、パウダーの状態で出荷されている。将来は「月産1トン」を目標としている。

次ページコオロギが数千億円の「養殖魚のエサ市場」への期待
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