イスラエルが超エリートをやたら輩出できる訳 多様な人材に最大限の力を発揮させる仕組み
先にイスラエルでは毎年1000以上のスタートアップが生まれることを紹介したが、その大半にはタルピオットの卒業生が、創業者やCTO(最高技術責任者)など、なんらかの形で関わっているそうだ。
プログラム設立当初にあった「安全保障面での優位性確保」という狙いをはるかに凌駕し、その可能性は大きく膨らんでいる。今やタルピオットは、世界中から投資が集まるイスラエルの経済発展を支える、国家の成長の原動力として機能しているのだ。
当初は「安全保障を目的とした優秀な技術開発を行うための技術エリートを育てる」ための活動だったにもかかわらず、結果は予想を凌駕した。民生分野でも新たな産業を興し、ベンチャー企業を次々と生み、世界からの投資を集め、国家の経済成長を大きく手助けしているということである。
1万人の中から選ばれた50人
選ばれた50人の研修生は、まずエルサレムにあるヘブライ大学において、アカデミックのプログラムとして物理、数学、コンピューター・サイエンスの3科目を学ぶ。
イスラエルが建国される前の1925年から開講されているヘブライ大学は、アラブ首長国連邦に拠点を持つコンサルティング組織が運営するCWUR(The Center for World University Rankings)というランキングで世界27位にランクされているレベルの高い大学。アインシュタインもその設立に尽力したと言われ、女優のナタリー・ポートマンなど有名人も少なくない。
研修生が学ぶこれら3科目はサイエンスの基礎と考えられており、徹底的に学び、少なくとも3つのうち2つの学位を取ることを求められるという。この3科目は、ほかのサイエンス分野でも通じる“広い視野、物事を見通す力”を養うと考えられている。
どのような分野においても、新たな研究開発を進めるにあたってコンピューターの活用は不可欠。しかもイスラエルで起こされるイノベーションの多くは、デジタル・テクノロジーを活用したものだ。そういう意味においても、コンピューター・サイエンスはデジタルワールドを理解する「基礎」と位置づけられているのだ。すなわちこの視点こそ、イスラエルがさまざまな分野でイノベーションを興し続けている要因の1つだということである。
これらの科目に加え“アクティブ・セミナー”という、研修生自身が作り、お互いに教え合うプログラムもあるそうだ。他人に何かを教えるためには、自分自身がその内容をより深く理解していなければならない。そのテーマはナショナル・セキュリティー、イスラエルの経済、クリエーティブ・シンキングなど多種多様。研修生自身が調べ、資料を作成し、プレゼンテーションを行い、必要に応じてグループ作業も行う。
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