大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」 市場価格は急騰、発電所トラブルが追い打ち

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東北電力は東新潟や仙台などの発電所で、出力を下げた制限運転を続けている。同社は「寒波が継続した場合に、LNGの在庫不足が起こらないように先々を見越しての対応であり、LNGの不足が生じている状況ではない」と説明するが、東京電力と中部電力が折半出資する最大手の発電会社・JERAなど多くの電力会社がLNG火力発電所の制限運転を続けている。

電力会社間での電力融通を取り仕切る電力広域的運営推進機関は1月3日以降、ほぼ毎日のように電力会社から他電力会社へ電力を送るよう指示を出している。特に厳しいのが西日本エリアで、東北電力や東京電力の送配電子会社などに対して、九電や関電、中国電力などに向けて融通の指示が出されている。

電気事業連合会は、日本ガス協会や石油連盟を通じ、都市ガス会社や石油会社に発電用燃料を供給するよう要請している。また、電力会社は海運会社に対し、LNG燃料輸送船の運航速度を上げ、LNG基地への到着を前倒しするよう求めている。

需給逼迫は長期化の可能性も

ただ、電力の需給逼迫は長期化する可能性が高く、「東日本大震災当時よりも厳しい」(市場関係者)との声も聞こえる。大震災当時は地震や津波による火力発電所の被害に加え、福島第一原子力発電所で重大事故が発生。東北や関東にある原発が軒並み稼働を停止した。

それに対し、「今回は、西日本を含めて全国規模での需要急増の継続に燃料の確保が追いつかない点に違いがある。政府は電力会社任せにせず、国民に向けて節電の必要性を広く周知すべきだ。LNG在庫が払底してからでは手遅れになる」(同関係者)という。

「今のような状況が数週間続くと、資金繰りに支障が出て経営が立ちゆかなくなる新電力も出てくる」(新電力幹部)という声もあがる。電力需給の逼迫は、さまざまな悪影響を各方面に及ぼす可能性がある。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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