ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす

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日本企業の対応は待ったなしだ(デザイン:熊谷 直美)

「世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円ともいわれる海外の環境投資を呼び込む」

1月18日の施政方針演説で菅義偉首相はそう述べ、国内外の巨額マネーを誘導しグリーン成長戦略を実現する考えを表明した。

世界のESG投資残高は4000兆円規模に

「環境投資3000兆円」というのは、国際的なESG(環境・社会・企業統治)投資の調査機関であるGSIA(世界持続可能投資連合)の報告書を基にしている。それによると、2017年度末の世界のESG投資残高は30.7兆ドル(約3200兆円)で2年前から34%増えた。ESG投資の定義がかなり幅広く、E(環境)に限った投資ではないが、2020年には40兆ドルに近づいたとみられる。

『週刊東洋経済』2月1日発売号は「脱炭素サバイバル 水素、EVめぐり大乱戦」を特集。世界各国が将来のグリーン戦略を示すなか、菅首相も「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロに」と表明。日本でも脱炭素への大変革が始まった。特集では、日本の脱炭素戦略のポイント解説、日本モデルの問題点、グリーンマネーのうねり、アメリカ、欧州、中国の動向、日本の強み・ハイブリッド車のジレンマ、トヨタ自動車の燃料電池車の成否、アップルも参入するEV覇権争いの行方、鉄鋼・商社・重工業といった各産業の課題、EV・水素・再生可能エネルギーの注目70銘柄など、脱炭素で変わる世界と日本企業の実情に迫った。

『週刊東洋経済』2月1日発売号の特集は「脱炭素サバイバル 」です。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

直近のESG投資の勢いを実証するのが、ESG関連ETF(上場投資信託)への資金流入の急増だ。昨夏以降、世界全体の純流入額は急増。コロナ禍の中、再生可能エネルギーへの投資など気候変動対策を経済再生につなげる「グリーンリカバリー」が欧州を中心に世界的潮流となったことと軌を一にする。

日本国内でもESG投資熱は顕著だ。象徴的事例が、大手資産運用会社アセットマネジメントOneが2020年7月に運用を開始した追加型投信「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の絶大な人気だ。当初設定額で国内歴代2位の3830億円を集め、直近の純資産総額は9200億円まで膨らんだ。

(出所)『週刊東洋経済』2月1日発売号「脱炭素サバイバル」

個人投資家の参入も顕著だが、グリーンマネーの主役は何といってもグローバルな大手機関投資家だ。単に株や社債に投資するだけではない。企業に対してさまざまな形で脱炭素を迫る彼らの圧力は日に日に強まっている。

次ページ企業に気候変動リスクの情報開示や対策が求められるように
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