ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす

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世界の500以上の機関投資家が加盟する投資家団体「クライメート・アクション100プラス」は、温室効果ガス排出量の多い世界167の企業とのエンゲージメント(対話)を通じ、2050年までの排出ゼロへ向けた目標設定と対策を求めている。

その団体にも加盟する世界最大の資産運用会社であるアメリカのブラックロック。同社のラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は気候変動リスクを先取りした形で「大規模な資本の再配分が起きる」との認識を示し、投資先企業に対して気候変動リスクの情報開示や対策の要求圧力を強める。同社は昨年、そうした対応が不十分だとして53社の株主総会で取締役選任案に反対票を投じるなどした。

HSBCグローバル・アセット・マネジメントの機関投資家ビジネス部門でESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、「気候変動による現実のリスクが増大し、再エネなどのビジネス機会も増える中でESGが資本の流れを変えた」と話す。そして、環境政策を柱とするバイデン政権の誕生で、「カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などの進歩的な投資家に限らず、(世界最大規模の)アメリカマネーの脱炭素シフトが本格化する」とみる。

日本の機関投資家も脱酸素を軸に選別

日本の機関投資家の間でも脱炭素を軸とした企業選別が進む。野村アセットマネジメントはカーボンプライシング(炭素の価格づけ)の仕組みを活用して企業の二酸化炭素(CO2)排出量をコストに換算し、財務情報に組み込んで投資判断に活用する。CO2はESG評価会社の推計値も使ってサプライチェーン全体の分も評価する。「今年1月から大手300社ほどを対象に始め、順次対象を広げる方針」(同社総合企画部)だ。

日本生命保険は今年4月から投融資全体にESG評価を導入する。国債や国内融資、不動産にもカバー範囲を広げ、気候変動をテーマとする企業対話も強化する。国内運用会社として最も早くESG評価を開始したニッセイアセットマネジメントのノウハウを活用した独自評価を行う。

SOMPOホールディングスは2020年9月、国内の石炭火力発電所の新規建設について保険引き受け・投融資は原則として行わないと発表。取引先の立地条件などから例外規定を残すものの、脱炭素への重要な一歩となる。「自然災害が増えていけば保険料が高騰し、損害保険という金融インフラの機能を果たせなくなる危惧がある。金融機能を使って影響力を行使し、気候変動問題の改善に貢献したい」と堀幸夫CSR室課長は話す。

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