「ラブコメ」ドラマで圧勝するTBSの大胆な妙手 「恋つづ」「わたナギ」といったヒットを連発

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正直なところ、放送前は「恋はつづくよどこまでも」がヒットするとはまったく思っていなかった。

純粋な普通の新人看護師と、Sっ気のあるイケメン医師という格差の大きい組み合わせも、詰め込まれた胸キュンシーンも、まったく目新しさを感じない女性向け漫画のド定番。事実、「壁ドン」が流行語大賞を受賞したのは2014年であり、それから6年も過ぎているだけに、「なんで今さら」と感じた人は少なくなかっただろう。

しかし、同作の格差のある組み合わせも、胸キュンシーンも、爆発的に受け入れられた。なぜなのか?と考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが放送時間。これまで同作のような女性向け漫画のド定番は、ほぼ深夜帯、動画配信、映画でしか見られないものだった。

つまり、「火曜22時台のプライム帯に放送する」ことが新しく、ラブコメの幅を広げたのではないか。しかも同作は、これまでに深夜帯や動画配信された同系のドラマ以上にキャラは漫画的で、胸キュンシーンは多く、インパクトは強かった。

実際、他局のドラマ関係者に話を聞くと、「あそこまでやるとは思わなかった」「プライム帯で男性視聴者を無視するような作風に驚かされた」などの声が続出。なかには「ウチはああいうドラマをやりたくない」と嫌悪感を示す人もいたが、それこそが新しさの証かもしれない。

ド定番でもプライム帯で十分勝負できる

もうひとつ意外だったのは、同作が終盤に視聴率をグッと上げ、最終話の世帯視聴率が15.2%(関東地区・ビデオリサーチ調べ、以下同)を記録したこと。これほど女性視聴者向けに振り切った作品でも15%超を取れることがはっきりしたのだ。その意味で各局の作り手たちは、「ド定番でもプライム帯で十分勝負できる」という選択肢を手に入れたのだろう。

さらに、同じTBS「火曜ドラマ」枠で次クールに放送された「私の家政夫ナギサさん」は、“一つの要素”を加えることで男性層の支持も獲得し、最終話の世帯視聴率を19.6%まで上げて終了。「録画やネット視聴の多い今でも、ラブコメでここまで取れるのか」と、またも業界内を驚かせた。

同作の「仕事に一直線で、恋や家事が苦手なアラサー・ヒロイン」「穏やかで優しい男性が彼女を癒す」という設定は、これまた女性向け漫画のド定番。特に相原メイ(多部未華子)の疲れた心身をいたわり、心をほどくような鴫野ナギサ(大森南朋)の言葉と笑顔は、年代を問わず女性視聴者の心をつかんでいた。

ここまでだけなら、前期の「恋はつづくよどこまでも」と変わらないが、ヒロインの相手役はイケメンではなく「おじさん」であり、そのヒロインに好感度の高い多部を起用したことで男性視聴者の心もしっかりとらえていた。

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