「ラブコメ」ドラマで圧勝するTBSの大胆な妙手 「恋つづ」「わたナギ」といったヒットを連発

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しかし、続く2021年1月期の「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」も堂々のオリジナル。他局よりも注力しているのは明らかであり、そのブレないスタンスは頼もしい。やはりTBS「火曜ドラマ」は、オリジナルという意味でもラブコメの最前線を行っており、今後は「ラブコメの名手」と言われる女優や脚本家が集まる場となるだろう。

一方、他局のラインナップに目を向けると、オリジナルどころかラブコメ自体が少なく、目立つのは刑事ドラマ。「火曜ドラマ」の成功で視聴者は「毎クール見たい」という心理状態になっているのだから、2021年は各局が最低1作はラブコメを放送するくらいでいいのではないか。

視聴率調査の刷新はラブコメに追い風

ラブコメを語るうえで最後にふれておきたいのは、昨春に行われた視聴率調査の大幅なリニューアル。これによって民放各局は世帯視聴率より、スポンサー受けのいい10~40代の個人視聴率を重視した番組制作を打ち出した。その10~40代はラブコメを好んで見る視聴者層にぴったり合致する。

例えば昨秋の「ルパンの娘」は2019年夏に放送された前作の世帯視聴率が7%程度だったにもかかわらず続編が制作された。この編成こそ視聴率とターゲットの判断基準が変わった証拠であり、「ラブコメにとっては追い風」と言ってもいいだろう。

また、その変化にともない、ヒロインを演じる女優の年齢が若返っていることも見逃せない。実際、昨年放送された「この恋あたためますか」は19歳の森七菜、「恋はつづくよどこまでも」は21歳の上白石萌音、「おカネの切れ目が恋のはじまり」は25歳の松岡茉優がヒロインを務めた。

2019年の「火曜ドラマ」では30代の深田恭子、石原さとみ、吉高由里子と、28歳の波瑠が主演を務めたことからも、急激に若返っていることがわかるはずだ。

ラブコメは若手女優の明るく元気な姿がハマるだけに、今年も新たな若きヒロインが誕生するのではないか。

コロナ禍の重苦しいムードがまだまだ続くようなら、ラブコメのニーズはさらに高まっていくだろう。いや、逆にコロナ禍が過ぎ去ったとしても、底抜けに明るいラブコメが今以上に求められるかもしれない。各局の作り手たちは、そのニーズに真正面から向き合うべきだ。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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