移民700人放置「トランプの壁」が招いた惨状

今も親と連絡が取れない子どもが666人いる

アメリカとの国境に近いメキシコ北部のマタモロスにキャンプで、スマホケースやおもちゃの電話で遊ぶキャンプの子どもたち=12月2日(写真:筆者撮影)
来年1月に就任するバイデン次期米大統領が直面する難題の1つが移民問題だ。国境の壁建設に象徴されるトランプ大統領の一連の移民排除策を大転換する構えだが、4年間の「後始末」は重く、新たな「移民危機」に翻弄されるおそれもある。アメリカの移民問題に迫った『エクソダス:アメリカ国境の狂気と祈り』の著者で、2019年にボーン・上田記念国際記者賞を受賞したジャーナリストの村山祐介氏が現地からリポートする。

アメリカ最南部ブラウンズビルから12月2日、橋を渡ってメキシコ北部マタモロスに入ると、国境施設のフェンス際までびっしりと、破れたビニールシートがかけられたテントが並んでいた。

エルサルバドルやグアテマラなどの中米、キューバやハイチなどのカリブ海諸国。有刺鉄線のフェンスで囲われた公園の敷地内に、アメリカに難民申請した世界中の移民約700人が暮らす。目立つのが子どもたちの姿だ。半数近い約300人を占め、うち約20人はこの地で生まれた。妊婦も約50人いるという。

キャンプ暮らしが1年を超えた女性

グアテマラ北部サンタエレナから来た農業イメルダ・メドラノ(29)は、キャンプ暮らしが1年を超えた。

軍に「国の土地だ」と言われて集落を追われた。「木材がお金になるからだと思います」。先に逃れた夫(49)と次女(6)は米当局に難民申請が受理されてニューヨークで審理を待っているが、長女(11)を連れて3カ月後に追った彼女は、審理を「メキシコで待て」と告げられた。その審理もコロナ禍で2月を最後に開かれていない。

2人用のテントにマットレスを敷いて寝ているが、眠れない日々が続く。
「長女は友達がいなくて、人と話す機会がほとんどありません。明日は12歳の誕生日なんですが、何も予定はないですし・・。ここでいつまで待てばいいのか考えていると、絶望的な気持ちになるんです」

この異形の集落ができた発端は、トランプ政権が2019年1月に導入した「移民保護手続き」だった。

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