移民700人放置「トランプの壁」が招いた惨状 今も親と連絡が取れない子どもが666人いる

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バイデン氏はこのキャンプに言及し、「難民申請を他国でさせる大統領などアメリカ始まって以来だ。申請者は今も川向こうの不衛生な場所で待たされ続けている」と強く非難した。

密入国した親と引き離された子どもの問題にも焦点が当たった。

アメリカNBCニュースが前日の21日、トランプ政権が密入国した親と引き離した子どものうち、545人がまだ親と連絡が取れていない、と報じていた(その後の続報で666人に)。司会者に対応を問われたトランプ氏は「子どもたちは手引き人や大勢の悪人に連れてこられた」と話をそらし、バイデン氏は「子どもたちは行き場がない。行き場がないんだ。これは犯罪だ。犯罪なんだよ!」と語気を強めた。

トランプ政権は2018年4月以降、「不寛容政策」を掲げて密入国した親と子どもを引き離した。激しい批判を受けて6月に撤回したが、その前後もあわせて5千人規模の子どもが親と引き離されたと見られている。関係当局の情報が共有されていなかったことなどから、2年半が過ぎた今でも多くの親と連絡がつかない状態が続いている。

親が連絡を「おそれている」ケースも

実態調査をしているNPO「テキサス市民権プロジェクト」コーディネーターのロベルト・ロペス(27)は「子どもたちの多くはアメリカ内の遠縁の親族などに身を寄せている」と話す。すでに親は母国に強制送還されているケースが多く、裁判所が任命した弁護士らが親探しに奔走するが、難航が続く。親がアメリカ関係者からの連絡を恐れるケースや、山間部などに暮らしていて連絡を取るのが難しいケースもあるという。

ホンジュラスに強制送還された数日後に殺害された父親もいた。「もともと逃げなければいけない状況だったのです。まだ連絡が取れていない親たちの中にも、すでに死亡している人がいる可能性が高いでしょう」。

一方、トランプ氏は討論会で、看板の国境の壁については「今や640キロを超す真新しい壁があり、国境はかつてないほど強固だ」と胸を張った。国防予算の転用などで150億ドル(約1兆6千億円)を投じ、約1200キロ分建設する計画はほぼ半分まで進んだ。

テキサス州マッカレン郊外で建設中の壁(筆者撮影)

国境警備隊リオグランデバレー管区主任隊員(広報担当)のクリスチャン・アルバレズ(37)はインタビューに対し、「壁で密輸犯の動きが変わり、壁がない場所に集中するようになった。壁が役に立っていることは単純明白だ」と強調した。

しかし、川沿いは土地収用が難航しており、実際には既存の壁の建て替えがほとんどだ。これまでなかった場所に新たにできた壁は1割ほどに過ぎない。テキサス州マッカレン郊外には、200メートルほどだけポツンと孤立する壁の工事現場もあった。

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