年の瀬に思う日本の「医療観と安楽死」の是非 ALS患者女性の嘱託殺人事件を患者学で考える

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ALSの患者が「死にたい」ともらしたとき、その言葉を表面的に解釈し「死にたいから手伝ってくれ」「殺してくれ」という依頼としてとらえるのではなく、「死にたいと思うほどに苦しんでいる」という現状を受けとめ、その苦しみを少しでも和らげたいとケアをすることが大切なのではないだろうか。

ALSになれば、もう生きている意味などない、幸せにはなれないと考えるのではなく、ALSになっても、その状況の中で希望を見つけられる社会にすることを目指すべきではないだろうか。

障害者や病者に圧力を感じさせない世の中

実際、ALSになって人工呼吸器につながっていても、飛行機を利用して海外旅行をするなど、明るく、そして活発に活動をしている患者さんがいる。そんな生き生きとされている患者さんの存在自体が、私たちの社会にとっての希望ではないだろうか。

筆者は、自己決定によってある特定の治療を受けなかったり、治療を差し控えることを否定しているのではない。社会から治療を受けることや治療を差し控えることへの圧力を障害者や病者に感じさせることがない社会、障害者や病者が生き生きと生きられる社会を創り出すことが望ましいと考えている。

参考文献
■ 安藤泰至 『安楽死・尊厳死を語る前に知っておきたいこと』岩波ブックレット 2019
■ 熊田佳代子『「優生思想」は現代社会に脈々と息づいている;障害者施設殺傷事件が突き付けた問題』 
■ 日本尊厳死協会 「ALS患者に対する嘱託殺人事件報道に関する日本尊厳死協会の見解」2020年7月27日 
■ W キッペス 『スピリチュアルケア』 サンパウロ出版、1999年
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