現代にも役立つ「戦国の忍び」諜報活動の奥義

「忍者」でも「Ninja」でもない、その実像に迫る

戦国時代に暗躍した「忍び」の実態を明らかにします(写真:metamorworks/PIXTA)
現在に続く忍者ブームは、戦後の1950年代末から1960年代に大きなうねりとなった。「忍の者(しのびのもの)」を「忍者(にんじゃ)」と呼ぶようになったのも、昭和30年代(1955~1964年)といわれる。忍者人気を不動のものにしたのは、岸本斉史『NARUTO-ナルト-』(1999〜2014年連載)の影響が大きい。アニメ化され、海外にも紹介されたことから、忍者ブームは世界に広まった。かくして、実在の「忍の者」は、「忍者」へと変貌を遂げ、やがて「Ninja」に成長し、超人的な身体能力、手裏剣を始めとする幾多の武器、忍術などを駆使して、諜報活動、暗殺、破壊工作などで敵と戦う人物というイメージを不動のものとした。
しかしながら、フィクションとしての「忍者」「Ninja」のイメージが膨張すればするほど、実在した「忍の者」の実像は、はるかにかすんでいった。では「忍者」でも「Ninja」でもない戦国時代の「忍の者」とは、どういう人々だったのか。平山優氏の著書『戦国の忍び』を一部抜粋・再構成し、その実像に迫る。

忍びを召し抱えなければ成果は望めない

『軍法侍用集』は戦国末期から近世初期を生きた軍学者の小笠原昨雲(勝三)が、1618年に完成させた軍学書である。その忍びの記述はすべて、武田信玄に仕えた服部治部右衛門氏信が、自ら会得した忍びの技術や心得と、彼が他国の忍びたちから得た知識などをもとに、懐中(秘伝)のものとして所持していたものを、提供されたと記されている。

全12巻のうち、忍びについての記述は、第6巻から第8巻までの3巻に及ぶ。全体の4分の1に及ぶ記述をみると、戦国の軍事にとって、忍びは重要な地位を占めていたことが窺われる。

そして、同書の忍びの記述の表題は「窃盗の巻」だ。冒頭に、忍びを召し抱えることの意義について、次のように明記されている。

大名の下には、窃盗の者なくては、かなはざる儀なり、大将いかほど軍の上手なりとも、敵と足場とをしらずば、いかでか謀などもなるべきぞや、其上、番所目付用心のためには、しのびを心がけたる人然るべし

戦国大名にとって、忍びを召し抱えねば、大将がどれほど戦上手であろうと、成果は望めないというのだ。敵や、足がかりとすべきところの情報がまったくなければ、敵に対し謀略を仕掛けることもできない。

つまり、戦国大名は戦上手と、忍びを駆使した謀略とが、車の両輪のように連携することで、初めて敵を打ち負かし、領国を広げることができると認識されていたわけである。

そればかりか、こちらが、忍びを召し抱えることで、敵への謀略を仕掛けるように、敵もまた同じように、こちらに忍びを放ってくるのは避けられない。それを防ぐためにも、忍びを雇い、彼らの経験と技とで、敵の忍びの潜入を防ぐことも大事だと指摘されている。

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