現代にも役立つ「戦国の忍び」諜報活動の奥義 「忍者」でも「Ninja」でもない、その実像に迫る
なお、『甲陽軍鑑』によると、味方の忍びであることを証明するための符丁として、隅取紙が使用され、これを提示できない者は偽者と判断されたという。
『軍法侍用集』7巻の巻末に、「よしもり百首の事」と題した百首に及ぶ和歌が収められている。これは「よしもり歌」と呼ばれた、忍歌であるといい、当時の忍びたちが体得しておくべき心得を、歌に巧みに織り込んだものである。
ここに登場する、「よしもり」とは、源義経に仕えた伊勢三郎義盛であり、山賊出身といわれる彼は、忍びの術を体得していたと伝わり、それゆえに忍びの奥義を、歌にしたのだとされる。そのため、百首に及ぶ忍歌は、義盛百首といわれたのだという。
もちろん、これは事実ではない。しかしながら、近世初期にはこうした百首の忍びの奥義を織り込んだ和歌が存在していたことは事実で、その成立は戦国期にさかのぼると考えられる。
忍びの任務や準備、心得がうかがえる
これらは、大変興味深い歌ばかりだが、目を惹いた数首を掲げておこう。
●いつはり(偽り)を 恥とおもはじ しのびには 敵出しぬくぞ ならひ(習い)なりける
●窃盗(しのび)には 時をしるこそ 大事なれ 敵のつかれと ゆだんする時
●ようち(夜討ち)には しのびのものを 先立てゝ 敵の案内 しりて下知せよ
●軍(いくさ)には 窃盗(しのび)物見を つかはして 敵の作法を しりてはからへ
●しのびには ならひの道は おほ(多)けれと まづ第一は 敵にちかづけ
●我陣に 夜うちしのびの 入る事は 与党の人の 科(とが)とこそきけ
●しのびゑて(得手)は 敵かたよりも どしうち(同士討ち)の 用心するぞ 大事なりける
●さまをかへ 姿をかへて いろいろに 敵をなぶるは 盗人の役
●城や陣に 火付け入れんと おもひなば 味方近付く 時をまつべし
これらを読むと、忍びの人々の任務と、それを完遂するための準備や心構えがうかがわれる。これらの忍歌は、今後、戦国期における忍びの活動を考えるうえで、十分参考になるだろう。
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