海なし県でも山梨が「マグロ」消費額2位のナゾ あの名将・武田信玄も好んで食べていた??

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

しかし、断言はできない。1つ、気になる論文を見つけた。植月学氏と宮澤富美恵氏の共著『甲州における幕末・明治期の海産物消費動向』だ。

これは江戸時代末期から明治期にかけて大久保黄斎という医者が書き残した『世事記』(今でいう家計簿的な記録)を分析した実に興味深い論文で、その中に、植月氏が15世紀の勝沼氏館跡(甲州市)において小型マグロ類、スマなどの出土を報告したことがある、という記述があるのだ。つまり、信玄が生まれる前の時代に小型マグロ類が甲府近辺に運ばれていた可能性があるということだ。

それならば、信玄がマグロを口にしていた可能性はゼロではないかもしれない。3月13日から『生誕500年 武田信玄の生涯』という特別展を開催予定の山梨県立博物館の学芸員の方に“信玄のマグロ食”について確認してみた。

信玄の食卓についてはナゾが多い

「文献上の記録はありません。(当時の本膳などの様子が記述されている)『甲陽軍鑑』の御献立之次第も武田家とは関係ないとされています。信玄の食卓についてはわかっていないことが多い。ただし、江戸後期に海産物の運搬に使われた中道往還は中世にも存在していましたから、状況証拠からすると、海への憧れがあったと言われる信玄がマグロを食べた可能性をゼロと決め付けることはできないと思います」

500年前に信玄公がマグロをおいしそうに食べている光景を想像するのは実に愉快ではないか。海なし県のすし・まぐろ文化は、時空を超えた歴史のロマンをかきたてる。そうだ、コロナ禍が一段落したら、山梨へ行こう!

【参考文献】

「甲府市史研究 第9号」甲府市市史編さん委員会
「甲州における幕末・明治期の海産物消費動向」 植月学・宮澤富美恵

山田 稔 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事