Aaaの政府格付けは回復の足取りが弱い中でも安定した位置づけにある《ムーディーズの業界分析》
ムーディーズは、Aaaの政府格付けはいずれも、財務的に負担がかかっている状況下でも、安定した位置づけにあるとみている。世界経済の回復は、一部の先進諸国では依然として弱含みで推移しており、その多くは、最大限の積極的な財政出動と金融政策を実行している。
そのため、政府は出口戦略の実行において多大なリスクにさらされており、それにより信用力がさらに弱まる可能性がある。格下げまでの距離が縮まっており、テールリスクが拡大しているとはいえ、債務負担能力(政府歳入に対する利払い費の比率)から判断して、Aaa格の政府の格付けは、いずれも現在のところ安定した位置づけにあるといえる。
債務負担能力に大きな負荷がかかっている英国と米国のAaaの格付けも、高い債務削減能力によって引き続き支えられる。債務削減能力は政府がショック後にバランスシートを修復する能力の高さを示すものである。
景気の回復が緩やかであることを勘案すると、裁量的な財政調整が現在のところ、世界的な危機が政府のバランスシートに与えた打撃を修復する主な手段である。成長により財政調整計画が支えられる政府もあろうが、いかなる政府もそれに多くを依存することはできない。
Aaa格の政府は、これらの財政調整のタイミングに関して高度なバランス感覚を求められており、民間需要が自律的な回復傾向を示す前に、財政政策の引き締めを行えば、回復を妨げ、政府の課税にも打撃を与える可能性がある。
しかし、財政調整のさらなる先送りもリスクが低いとはいえず、市場がそれにどれだけ耐えられるかにより、中央銀行が何らかの行動を取らざるをえなくなる可能性がある。現在の高水準の債務では、金利が上昇すれば、すでに困難となっている財政均衡をさらに難しくし、格付けにも急激に影響が及ぶ可能性がある。