日本も他人事ではない米国「医療崩壊」の深刻度 地元病院に空きがなく600キロ移送される例も

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ただでさえ高い感染リスクにさらされている看護師も、シフトが長時間化している。

ガルサ氏によれば、同地域の病院は小児科の集中治療室から成人向けの集中治療室に看護師の配置転換を行ったり、病室ごとの患者数を倍増させたり、日ごろは2人の重症患者に対応している看護師に3人以上の担当を割り振ったりするなどして急場をしのいでいるという。「患者に割り当てる時間やリソースが減れば、当然、最適なケアは提供できなくなる」(ガルサ氏)。

集中治療室も満杯状態

シカゴの救急救命室で看護師として働くコンスエロ・バルガスさんによると、集中治療室(ICU)が満杯となっているため、患者が何日も救急救命室にとどまる事態となっている。看護師不足のせいで医療現場は負のスパイラルに陥り、「転倒したり、床ずれを起こしたりする患者が増え、ケアの提供にも遅れが出ている」という。

人員も、使える病床も、防護具も、まったく足りていない。全米看護師連合が開いた記者会見でバルガスさんは、N95マスクなどの防護具不足はいまだに解消しておらず、自分で自分のものを買わざるをえない状況にある、と訴えた。

同様の悲鳴はほかの病院からもあがっている。検査キット、マスク、および手袋の供給不足が続いている、というのだ。前出のオスターホルム氏も、アメリカは感染第1波で直面した個人防護具の不足を今も完全には解消できていない、と話す。

一部の都市の病院には、物理的に十分なスペースがあり、速やかに病室を追加したり、屋外に臨時の入院施設を建設できたりするように見えるところもある。ただ、どれだけ病床数を増やしても、人員が追いつかなければ意味がない。

ユタ州ソルトレークシティーで病院やクリニックを幅広く展開するインターマウンテン・ヘルスケアの最高経営責任者、マーク・ハリソン医師は言う。「病床が患者のケアをするのではない。スタッフが患者のケアをするのだ」。

(執筆:Reed Abelson記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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