日本も他人事ではない米国「医療崩壊」の深刻度 地元病院に空きがなく600キロ移送される例も

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カーテンでベッドを仕切っただけの間に合わせの病室に移されたファインさんの周囲には、まさにカオスが広がっていた。看護師はファインさんがどんな患者だか理解しておらず、「歩けますか」「耳鳴りはしませんか」と、とんちんかんな質問を投げかけてくる。

スタッフは「親切に気遣ってくれたし、すさまじい状況の中でベストを尽くしてくれた」ことは理解しているが、「とにかくヘトヘトに疲れ切った」とファインさんは病院での経験を振り返る。

病床の埋まり具合は「とんでもなく高い」

UWヘルスのスタッフは11月22日、地元紙「ウィスコンシン・ステート・ジャーナル」に2ページ見開きの広告を出し、住民に感染予防の徹底を訴えた。

「直ちに状況を変えなければ、病院は能力の限界に達し、コロナだけでなく、ほかの病気やけがも含めて、診療できなくなる患者が出てくる」と病院は警鐘を鳴らした。「あなた、もしくはあなたの愛する誰かが近いうちに私たちの助けを必要とするかもしれない。しかし、コロナ、がん、心臓病などで一刻を争う事態になったとしても、命を救う治療が提供できなくなるということだ。医療提供者として、それが現実になることを恐れている」。

病院はファインさんの件について直接コメントしなかったが、パンデミックで医療が逼迫していることは認めた。コロナで患者が急増する以前にも、ときには救急救命室が満杯となることもあった。ただ、現在の埋まり具合は「とんでもなく高い」とUWヘルスのチーフ・クオリティー・オフィサー、ジェフ・ポトホフ医師は話す。

ポトホフ氏によれば、UWヘルスでは「これまでにない対応を始めている」。1次医療を担うプライマリケア医や一般開業医に協力を呼びかけ、重症患者の治療にあたってもらったりしているという。「うまくいってはいるが、褒められたことではない」(ポトホフ氏)。

ミズーリ州セントルイスの病院はこのところ、とくに大きな負担を強いられている、とカトリック系の病院グループ、SSMヘルスでチーフ・コミュニティー・ヘルス・オフィサーを務めるアレクサンダー・ガルサ医師は話す。ガルサ氏は同地域におけるコロナ対策タスクフォースのトップも務めている。すぐに対応できる状態にないとしてSSMヘルスが受け入れを断った患者の数は、この1カ月間でおよそ50人に達した。

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