観光を成長戦略にする政策はもうやめるべき訳

緊縮財政を超えて求められる「新しい政策様式」

観光やインバウンドを成長戦略の柱に据える政策は、コロナによって成り立たなくなった(写真:Ratth/iStock)
内外で議論の最先端となっている文献を基点として、これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
今回は、中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、柴山桂太(京都大学大学院准教授)の気鋭の論客4名が、コロナ後の社会・経済・国家をテーマに討議した座談会の第3回をお届けする。

危機対応を「民度」に頼る日本

:『フォーリン・ポリシー』『ガーディアン』といった海外の報道を見ると、「日本でなぜコロナ対策がうまくいっているのかよくわからないが、やはり国民の規範意識や衛生観念、協調性などの文化的なもののおかげだろう」というのが、大体の結論ですね。

これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論します。この連載の記事一覧はこちら

柴山:イタリアでは、ロックダウンは2カ月目ぐらいから機能しなかったそうです。みんな働こうとし始めて。

中野:いかにもイタリア人らしいですね。

柴山:ある人から聞いた話では、学生寮で留学生はみんなおとなしくしていたけど、イタリア人の学生は飲みに行っていた、というんですよ。政府が命令したってダメなんです。

:麻生大臣あたりはそれに乗っかって、「『うちの国民は民度が高いから、おまえのところとは違うんだ』と外国の政治家に言ってやった」などと、国会で誇っていたらしいですね。まあ理解できなくもないですが、政治家としては外国人に自慢するだけでなく、「高い民度」がなぜ培われてきたのか、それを維持するにはどういう政策を練ればいいかを考える方向にいってほしいですが……。

柴山:ただ「国民の行動は政府の命令だけでどうにかなるものではない」ということは、別にイタリアに限らず、どこの国でも言えると思います。レストランへの営業自粛要請にしても、ひと月休むぐらいなら、「新メニューを考えるのにいい時間だ」ということになるかもしれませんが、2カ月、3カ月休業となると顧客も離れますし、ウーバーイーツなど自粛で逆に伸びているところに顧客を取られてしまう恐れもありますから、無理をしても店を開ける所も出てくる。生活がかかってきたら、政府が何を言おうがルールは破られ始めるんです。

中野:日本で国民の行動が決定的に変わったのも、専門家会議が声を上げたからとか、安倍首相が学校の授業を休止させたからというより、志村けんが亡くなったことが大きかったですね。あれで「これはやばい」とみんなが思って、急に自粛し始めた。自分の周囲に感染者がいるわけでもないので、危険性が実感できなかったのに、1人のコメディアンの死によって事態の深刻さを瞬時に認識し、即座に行動変容を実行した。これは特筆すべきことで、説明は難しいですが、私はこれこそ国民の智慧だと思って感動した。

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