観光を成長戦略にする政策はもうやめるべき訳 緊縮財政を超えて求められる「新しい政策様式」

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柴山:施さんもおっしゃるように、僕も社会の中でとくに傷みが限界に来ているがどこなのかを把握したうえで、政策を練り直すべきときではないか思います。

コロナで今、対応する医療の現場がひどい状況になっていて、お医者さんも看護師さんも大変という話があります。それはそのとおりとしても、ひどい状況にあるのは医療だけではありません。

柴山 桂太(しばやま けいた)/京都大学大学院人間・環境学研究科准教授。専門は経済思想。1974年、東京都生まれ。主な著書にグローバル化の終焉を予見した『静かなる大恐慌』(集英社新書)、エマニュエル・トッドらとの共著『グローバリズムが世界を滅ぼす』(文春新書)など多数(撮影:佐藤 雄治)

例えば教育の現場です。私自身が大学で若い人たちをずっと見ているので肌で感じるんですが、彼らの苦境はひどいですよ。大学生がキャンパスに行けていないわけですから。

今回のコロナ危機でも、若者世代がいちばん犠牲になっています。コロナのリスクは高齢者のほうがあるので、自粛政策による便益を相対的に多く受ける。若者はそれに協力する立場のはずですが、誰にも感謝されないうえに、マスコミからは感染拡大の戦犯扱いまでされる始末。

学生は授業に出られないだけでなく、現状ではアルバイトもできない。家計が苦しくなった学生向けの奨学金制度もできたんですが、あきれるぐらい使い勝手が悪くて、全員が利用できるわけではない。「コロナうつ」も増えているようです。

小中学校の先生に話を聞いても、本当に大変そうです。休校分の遅れを取り戻さなければならないうえに、感染症対策もしなければならず、クラスターでも出ようものなら責任を取らされてしまう。過重労働なうえに薄給で、コロナ前から教師になりたい人が減っている社会になっていたものが、コロナでさらにひどくなってしまった。もちろん、現場は必死に努力されていると思いますが、予算措置を含めて、体制を立て直す必要がありますね。

国の基本「治水事業」がおろそかに

:最近、「日本はボロボロになっている」と思うことが本当に多いですね。今年7月の九州の水害でもそう感じました。福岡県や大分県にまたがる筑後川流域は、ここ3、4年、ほぼ毎年7月になると水害が起きているんですよ。まるで夏の風物詩で、毎年同じ時期に、同じように氾濫している。福岡の南に小郡市というところがあるんですが、そこのイオンは一昨年、昨年と冠水し、今年も危ぶまれていました。治水事業は国の基本だと思うんですが。

中野:秦の始皇帝の時代からそうですからね。

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