東京の街中で「タヌキ目撃」が激増している謎 飲食店の残飯を食べていたかもしれないから?

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ハクビシンは外来生物で、江戸時代に持ち込まれたとされる。アライグマのように新興感染症ウイルスとの関係で特に注意するべき存在ではないが、2002~2003年に中国や台湾を中心に感染が拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)のウイルスの自然宿主ではないかと、疑われたことがある。2005年になってSARSウイルスの自然宿主はキクガシラコウモリであることがわかったのだが、一時は「悪いイメージ」が広がった。

タヌキは昔から日本にいる在来生物で、民話や童謡などにもよく登場する。在来、外来生物を問わず、野生生物が人間の生活に被害をもたらす場合、鳥獣保護管理法に基づいた有害鳥獣捕獲を行うことがある。ハクビシンやタヌキの場合、屋根裏や軒下に入り込み、糞尿による悪臭が広がったり、農作物や庭の植物を食べたりする被害が出ることがある。

手続き的には、区市町村が都道府県に有害駆除申請を行う。実際には、区市町村からの委託を受けた駆除業者が年度初めなどに一定期間の範囲で申請し、許可を得ている。

ハクビシン(写真左、撮影:古屋正善)とアライグマ(写真:環境省)

飲食店の休廃業

新型コロナウイルスの感染拡大のなか、緊急事態宣言が出されたころ、東京の街を歩くと、休業のお知らせを出してシャッターを下ろした飲食店が目立った。その後、再開した店も多いが、よく行ったレストランが店を閉めてまったく別の店になっていたり、テイクアウトに切り替えたりした店もある。

帝国データバンクによる新型コロナ関連倒産の統計でも、業態では「飲食店」が、都道府県別では「東京都」が最多だ。再び感染が拡大傾向に転じた「第3波」のなか、ようやく客足が戻る兆しが見えていた飲食店は苦戦している。東京都による営業時間短縮の要請に従う店も、従わない店も客足は大幅に減るだろう。

飲食店の経営者や従業員、食材をおさめていた流通関係者、生産者と影響の及ぶ範囲は広く、ダメージは計り知れない。飲食店の残飯を食べていたかもしれない野生生物にもその影響が及んでいるのか。人間さまとしては、そうした野生生物と遭遇した場合、むやみに近づいたり、餌やりをしたりしないようにしたい。野生生物と人がうまく住み分けることが、さまざまな感染症ウイルスを避けるためにも必要だ。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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