東京の街中で「タヌキ目撃」が激増している謎 飲食店の残飯を食べていたかもしれないから?

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一方、「タヌキが飲食店の残飯をあさるとは思えない。木の実や果物などを食べていて、人間の生活圏には入ってきていないのではないか」(生活を脅かす動物を駆除する会社や団体で構成される公益社団法人東京都ペストコントロール協会)という指摘がある。

とはいえ、都会のタヌキの食生活などの実態はまだ解明されていない。広く目撃情報を集めて生息分布の把握を目指す「東京タヌキ探検隊!」は、フンの採集・分析を行ってきた。隊長の宮本拓海氏は「都会のタヌキは人間が出した生ごみも食べている。しかし、飲食店の残飯をあさっている姿を目撃した例はない。フンの分析も、サンプル数がまだ少ない」としている。

この点、石井教授は「飲食店の残飯をあさっていたタヌキが、餌を探して今までいなかったところに出てくるということもあるかもしれませんが、調べてみないとわかりません」と結論づけた。

東京女子大学構内で2019年に撮影されたタヌキ(写真:石井信夫名誉教授提供)

アライグマ、ハクビシン、タヌキ

江東区と杉並区の例を紹介した。江東区の数字は、住民から区に通報のあったタヌキの目撃情報、杉並区の数字は駆除件数で、いずれも2020年夏には前年に比べ、増えていた。都会のタヌキの生息数や生息実態はわからないことが多い。東京の街にタヌキが増えていると確実には言えないが、「人とタヌキの遭遇」は増えたようだ。

近年、アライグマ、タヌキ、ハクビシンの都市への“進出”が目立つのは間違いない。区市町村で住民からの通報や相談を受ける環境課などが担当する野生動物には、この3種類が含まれる。

アライグマは外来生物の中でも、生態系や人の生命・身体・農林水産業への被害を及ぼす、もしくはその恐れがある「特定外来生物」に指定されている。いわば、「WANTED(指名手配)」されている。日本では、1970年代後半にアライグマが登場するアニメがテレビで放映されたのをきっかけにペットブームが起きて輸入された。

その後、飼い主のもとから逃げ出したり、飼い主に捨てられたりして、全国に生息域を広げた。マダニの体内には、人に重症熱性血小板減少症候群という新興感染症をもたらすSFTSというウイルスがいることがあり、アライグマはマダニとSFTSウイルスの運び屋となっているとみられている。またアライグマは日本では撲滅された狂犬病ウイルスを媒介する生物としても知られる。

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