東京の街中で「タヌキ目撃」が激増している謎 飲食店の残飯を食べていたかもしれないから?

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「南砂町の近くでタヌキ2頭に遭遇。居酒屋の裏道から現れて、駅のほうに走っていった」(3月4日)、「江東区清澄白河駅から徒歩3分のマンション住民です。さきほど自宅の下でタヌキに遭遇」(10月3日)、「江東区北砂の河川敷にタヌキ。餌付けしているオヤジいた」(10月5日)などの発信があった。

杉並区では10年前から定着していたが…

アスファルトとコンクリートの街、という印象がある江東区にタヌキは驚きだったが、東京の西部では、驚くことではないらしい。杉並区の武蔵野市との境にある東京女子大学では、「もうずいぶん前から、たくさんいます。学内に設置した自動カメラにいちばんよく写った動物はタヌキです」と、石井信夫・東京女子大学名誉教授(哺乳類生態学)は話す。

タヌキは昔から日本にいる在来の野生生物。「外来生物のアライグマは、感染症のウイルスを媒介するマダニを運んでいる可能性があると聞くが、タヌキは危険ではないと考えてよいか」と石井教授に聞いた。

「そんなことはありません」という答えが返ってきた。「例えば、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という新興感染症ウイルスを持っているマダニは、アライグマだけでなく、ネコにもタヌキにも付きます。野外にいる動物にはいろいろなダニやノミがいます。近づいたり餌をやったりすることはお勧めできません」。

実際、杉並区では、「疥癬(かいせん)を持っている(皮膚病にかかっている)タヌキがいるなど、住民からどうしても駆除してほしい、という申し出があった場合、業者がオリを貸して、捕獲回収している」(環境課)。こうしたタヌキが駆除された件数は、2020年度は、4~8月の5カ月で34件と、2019年度の11件、2018年度の9件に比べ、ダントツに多かった。

その背景について、関係者は、「新型コロナの感染拡大のため、休業や廃業した飲食店が多く、残飯を餌にしていたタヌキが、食べ物を求めて街中に出てきたのではないか」「自宅勤務となり、家にいる時間が長くなり、タヌキの存在が気になるケースが増えたのかもしれない」と推測している。

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