サッカーのようにある局面を評価し、最善の手を探すシミュレーション研究はカーリングにおいても進んでいるようだが、「じりつくん」のようなAI利用はまだないようだと山本氏は話す。
「アメリカの学会に出て、テクノロジーを導入しないスポーツは衰退するだけ、ということを改めて実感しました。野球やサッカーなどメジャースポーツは、ビジネスが絡むだけにAI利用のスピードが速い。
カーリングに限らずマイナースポーツでも、テクノロジーとの融合にあらゆる選手、関係者、チームが手をつけ始めています。近い将来、マイナースポーツでも成果が出てくるでしょう。技術の導入に躊躇する選手やチームは取り残されるだけだと感じました」
もともとは物理シミュレーションソフト
「じりつくん」はもともと、2016年に電気通信大学の伊藤毅志准教授らによって開発された「デジタルカーリング」で“動くAI”として誕生した。
デジタルカーリングは、ある局面においてショットのウエイト(強さ)と方向、回転を指定すると、物理シミュレーションによって次の局面を生成するゲームだ。ショットには乱数が加えられ、シート(氷)の状態や選手の技量を考慮することもできる。
カーリングでは2チームが相互にプレーする。目覚ましい発展を遂げた将棋や囲碁のAIと共通点が多い。ある局面の優劣を評価し、評価が最も高くなる手を選択していくからだ。ただ、カーリングではトッププレーヤーであっても、必ずしも狙い通りのショットができるとは限らない。その点は将棋や囲碁と異なり、不確実性がある。
「じりつくん」は、ニューラルネットワークによる評価関数の学習と、運や不確実性があるゲーム、例えばバックギャモン(西洋すごろく)などで利用されるアルゴリズムを用いたゲーム木探索によって最善手を判断する仕組みになっている。
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