「テクノロジーを導入しないスポーツは衰退する」
1970年代、アメリカのメジャーリーグ・ベースボールでは、統計やデータを戦術や選手の評価に使う「セイバーメトリクス」が導入され始めた。さらに近年は、カメラやドローンが廉価となり普及したことで、センシングや動画解析といった技術導入も進んでいる。
つまり野球では、打者であれば打球の初速や角度によってホームランがどの程度出るかを解析し、トレーニングに生かすといった流れが強まっているということだ。
ラグビーでは、日本代表の選手が練習でセンサーやGPSを装着し、運動量などのバイタルデータを収集して個々のプレーやチームの戦術評価を行っている。サッカーでもピッチ全体を俯瞰する複数のカメラを使うことによって、ボールに直接絡まないものの、いい仕事をする選手の評価や戦術の検討を行っている。
カナダの選手からアプローチ
山本研究室の「じりつくん」が発表されたのは2020年春、ニューヨーク市で開かれたアメリカ人工知能学会(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)の場だった。
「アメリカなので野球のイメージがありましたが、サッカーに関する研究発表が最も多かったんですね。その他はバスケットボールやアイスホッケーです。
こうした研究の主眼の一つには、選手の動きをどう評価するかがある。パスにどう関わり、総運動量やカギとなる選手との関係などはどうだったか。それらを分析して年俸算出に使うわけです。また、チームとしてのフォーメーションの研究が目立っていました」
「じりつくん」の発表後、山本氏にカナダのカーリング選手からアプローチもあった。「自分たちも似たようなことを考えているけど、実際はどんな感じなんだい?」と。日本のカーリング女子は2018年に韓国で開かれた平昌冬季五輪で銅メダルを獲得している。ライバル国の動向が気になったから接触してきたのだろう。
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