パナソニック持株会社化に透ける強烈な危機感 新社長の楠見氏は冷徹と優しさを両立できるか

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経営戦略は、企業全体を司る全社(企業)戦略と単一事業を対象にする事業(競争)戦略に大別される。前者を持ち株会社が、後者を傘下の事業会社が担当する。言い換えれば、経営の監督と執行の分離である。こうすることにより全社戦略的視点から下す意思決定が早くなる。

これでは、教科書的説明で終わってしまうので、津賀社長、楠見新社長、片山栄一常務の発言した「キーワード」に基づき、新たにスタートするパナソニックのコーポレートガバナンスの狙いと課題を整理しておきたい。

まずは、津賀社長が強調したキーワードである「専鋭化」についてである。

「事業領域を絞り込み、高い専門性を持ち、社会やお客様に対して、他社には真似ができない(事業を通じて、人々の暮らし、社会の発展に貢献し続ける)より深いお役立ちを果たす」ことを津賀所長は「専鋭化」と表現し、次のように続ける。

各事業に大胆な権限委譲を

「今回の体制変更により、各事業には大胆な権限委譲を行い、自主責任経営を徹底します。持ち株会社は専鋭化する事業を全社視点で迅速かつ的確に支援し、事業の専鋭化を加速します。さらに、新しい成長事業を創出し、グループ全体の企業価値を高めます。競合相手は誰なのか、その競合相手が利益を出しているのならば、なぜ自分たちは利益が出ないのか。足元をきっちりと見て、やるべきことをしっかりとやる。専鋭化した結果、シナジーを活かしたい」

持ち株会社のデメリットとして指摘されているのが、現場重視の経営という日本企業の競争力が衰えるのではないか、という懸念である。この点について、津賀社長は「手触り感」というキーワードを使い、この懸念を否定した。

「新たな(事業会社)パナソニック株式会社のトップを、(持ち株会社)パナソニックホールディングスの役員が兼務することは、今回の思想から考えればありえません」としながらも、「事業会社ごとに取締役会を置き、ホールディングスの役員が頻繁に議論に参加し、現場に足を運ばなければ(現場に触れて知る)『手触り感』が持てない。手触り感を担保しなければ、この形(新しいコーポレートガバナンス=持ち株会社化)は回らないだろう」と力説する。

片山常務は津賀社長の「手触り感」をフォローする形で「薄皮」というキーワードで、持ち株会社と事業会社間の風通しのよさを強調した。

「これまでは、パナソニック、カンパニー、事業部から成る3層構造であったが、新体制では、パナソニックホールディングスとパナソニックの2層構造になり『薄皮』の関係になります。2003年に導入したドメイン制では10のビジネスユニット、2013年に設けたカンパニー制では4カンパニーという組織になっていました。新たな体制では、事業会社が管轄するビジネス部門は3つになり、経営効率はかなり改善できます」

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