パナソニック持株会社化に透ける強烈な危機感 新社長の楠見氏は冷徹と優しさを両立できるか
アナログ家電時代であれば、高度な技術の壁を超えるのには、かなりの時間がかかるとされていたが、今や、デジタル家電に見られるように、短期間でフォロワーに追いつかれ、追い越されてしまう。この競争パターンが、家電にとどまらず、半導体、液晶、そして車載電池でも見られるようになってきた。
車載電池でパナソニックがうかうかできないのが、中国企業、とりわけ、2017年に世界市場でパナソニックを追い抜き首位に躍り出たCATLの台頭である。同社は、ドイツのBMWとの協業を契機にグローバル戦略を強化。同時に、世界中から優秀な若いエンジニアを大量にヘッドハントする「1000人計画」を推進し、最先端の技術開発を進めている。
近年台頭する企業にみられる3つの特徴
このような技術・製品開発環境の変化に加えて、近年台頭している企業には、次の3つの特徴がみられる。
① 専業企業である、②資金調達力に優れている、③強力なリーダーシップを有している──などである。
サムスンやLGなどは、コングロマリット型財閥企業であるので①は当てはまらないと思われるかもしれないが、競争力が強い事業体においては、事実上、専業企業的な動きが見られる。中国企業については、米中摩擦の行方が不透明なだけに、現時点で政治(政府)との関係について断定はできないが、いわゆる国家資本主義の体制が、国際競争力を強化したい戦略事業を、陰になり日向(ひなた)になりして応援しているという強みがある。
筆者は同い歳ゆえ、パナソニック社長の津賀一宏氏に同情するわけではないが、孤独なトップには、外部どころか従業員の目にも見えない苦労があったことと察する。パナソニックのトップと比較しては不遜だが、筆者は大学(前任校)で経営学部長ごときを2期4年間務めただけで大きな責任とストレスを感じた。グループ社数529社、売上高7兆4906億円、従業員数約25万9385人(2020年4月1日現在、国内外)の大所帯のトップにかかる重圧がどれほど大きなものかは十分理解できる。
こうして論考を書いているので筆者も人のことは言えないが、自分の子どものような歳の社会経験浅きジャーナリストやアナリストから厳しい質問、指摘を受けるたびに「じゃあ、あなた、この巨大組織の経営をやってくださいよ」という思いが込み上げてきたのではないだろうか。
とはいえ、情報開示が求められる上場企業のトップは、顧客、株主、従業員、社会だけでなく、厳しい評論、評価にも耐え、真摯に対応していくのも仕事の1つである。津賀社長は情報開示に真摯に対応したが、ジャーナリスト、アナリストが下した評価は辛口だった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら